第三章 視えない能力

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 やがてすぐに。瑞季ちゃんは義顕が、水天宮の神主の家系だと知ることになる。  神職の息子であれば、何か不思議な力を持っていておかしくない。そう思った瑞季ちゃんは、以前よりも増して義顕と仲良くなるように。  そして瑞季ちゃんは気付いたのだ。義顕が持つ、不思議な能力に。  私達はそれが、この水天宮に棲む神様。徳子(トッコ)ちゃんや言仁くん達── それだけでなく、桜の樹の下にいる九郎も視ることができる能力だって知っているけど。  瑞季ちゃんには、義顕が持っている能力の用途がわからなかったらしい。  それでも義顕が発する、その強い力に接するうちに。気付かれないように少しずつ、その能力を吸い取って自分の体内に蓄え続けていたのだと言う。  しかし、義顕はみるみる衰弱してしまう。どうやら瑞季ちゃんは義顕の能力だけでなく、生きるための「正気(しょうき)」のようなものさえ奪ってしまっていたみたい。  やがて学校を休むようになった義顕に対して、瑞季ちゃんは罪悪感で押し潰されそうになる。  そんなつもりじゃなかったのに…… 義顕には元の元気な姿に戻ってもらいたい。  そう思い始めた瑞季ちゃんは、抜き取った能力を気付かれないように返すつもりで義顕のお見舞いを決意したのだそうだ。  そのはずだったのに。対峙した義顕に、自分が黒谷一族の能力者であることを気付かれてしまった。  慌てた瑞季ちゃんは自分と従えている(アヤカシ)の全ての力を使って、義顕の記憶を操作した上で能力を戻す術を使おうとした。  その時。機転を利かせた九郎が義顕の身体(からだ)に乗り移り、それを阻止したのね。  あの時、九郎も何かの能力を瑞季ちゃんに使ったようにも見えたのだけど…… まあ、それは後ほど。九郎のヤツを締め上げるとするか。  瑞季ちゃんと九郎の不思議な力に晒されて。きっと何かの拍子で義顕の意識に眠っていた継信くんが目覚めてしまったのね。  そー言えば、継信くんの意識を消す時も、九郎は不思議な力を使っていたな。まあ…… 継信くんとはあんまり関わりたくないから。それで助かったけど。  え?どうして継信くんと関わりたくないかって?だって…… 継信くんの死に際に私、恥ずかしい約束をしちゃったんだもん。  ここではとても言えない。恥ずかしいもん。(気になるかたは前作をお読みください)
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