第三章 視えない能力

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 そして瑞季ちゃんは、祓い屋になるための修行は続けるものの。もう二度と人体に── 人の生死に関わるような危険な術を使わないことを約束してくれた。  話を聞いているうちに、私気付いちゃったのよね。きっと喜一さんもそう思ったでしょうけど。え?みんなもそう?  瑞季ちゃんって、義顕のことが好きなのよ、きっと。そして義顕も、まんざらではない様子。  キャー!なんでしょう、この青く甘酸っぱい青春の香り!私、応援するからね、義顕。  瑞季ちゃんが帰って行くのを石段の上の鳥居で見送る。 「さて、これで一件落着だね。じゃ、僕は仕事に戻るから」  そう言って、喜一さんは社務所へ戻って行く。残されたのは、私と義顕。 「あんた、瑞季ちゃんを送って行かなくて良かったの?」 「え?どうして?」 「…… まあいいわ。身体(からだ)のほうはどう?まだどこかおかしい?」 「ううん。今までのダルさとかが嘘みたいに吹っ飛んだ」 「そう。それは良かった。じゃあ、明日から学校に行きなさい。瑞季ちゃんのためにも」 「そうだね。そうする」  さて…… あとは九郎だな。私は義顕を連れて、九郎がいる桜の樹の下へと向かう。 「ありがとね、九郎。おかげで全て、まるく行ったよ」 「そう…… それは良かった」 「ところで。あんた、瑞季ちゃんと義顕に── それだけじゃないよね。義顕の身体(からだ)に現れた継信くんの意識に、どんな術を使ったの?ってゆーか九郎、そんな不思議な術を使えるの?」  私の問いかけに、九郎は少し恥ずかしそうに首のあたりに手をやる。 「そっか…… そうだよね。橘似は生きていた僕しか知らないから、不思議に思うのも無理はないか。  僕はすでにこの世のモノではなくて、いわば魂だけのような存在だから。どうして橘似や義顕に僕が視えるのかはわからないけど。  だから、人間離れしたこともできるのさ──」
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