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「徳子ちゃんの、お兄さん?」
徳子ちゃんには4人のお兄さんがいる。異母兄である重盛、基盛と、同じ尼さまから生まれた宗盛、知盛。
上の2人とは会ったことはないけど。宗盛、知盛だったら会ったことがある。それに、壇ノ浦で初めて徳子ちゃんに会った時のことを考えると……
「そうじゃ。知盛じゃ」
やっぱり。知盛さんのことか。
新中納言、平知盛。まさに漢の中の漢。
隆盛を極めた父、清盛の時代を境に。平家一門の名だたる武将はどんどん京で貴族化して行く中で、一番武将としての心得を残していた人物だと思う。
私が知盛さんと初めて会ったのは、平家の一ノ谷の陣中。あの「鵯越」の直後。
平家の陣の中に、突如降って来た部外者である私達に立ち向かって来たのが知盛さん。
幼い頃は六波羅にある清盛の家で過ごしていた幼名牛若こと、九郎少年。そこでは年端の近い清盛の息子達と、毎日のように庭で一緒に遊んでいたのだろう。
あの砂浜でお互いを「牛若」「清四郎」と幼い頃の名で呼び合い、抱き合った2人の姿は感動的ですらあった。
現代には腕は立つけど頭がキレない。みたいな残念な伝説を残してしまっているけど。
本当の知盛さんはそんなことなく。九郎が示した源氏の案もすぐ理解したり、双方が協力できるよに率先して動いてくれたりしていた。
多分、そんな不名誉な武勇伝が残っているのは、きっとアレのせいなんだろう。
碇知盛──
壇ノ浦で窮地に追いやられた平家一門が次々と入水して行く中。遺体── もしくは生きたまま捕らわれて晒し物になるなどの辱めを避けるために。
知盛は鎧を二重に着て、船の錨を担いで海に身を投じたと言う伝説。
それは歌舞伎の演目、「義経千本桜」のクライマックスとしても描かれている。
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