勇者と魔王

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 魔王の抹消、それが勇者に命じられた使命であった。正攻法で魔王の元にたどり着くのは、現状不可能であった。  そこで、勇者にはある方法が提示されていた。それは、禁断の魔法、時渡りであった。  時渡りは、極めて高い魔力の持った者のみが、使用できる魔法であり、過去や未来へ移動できる魔法である。  勇者は、この魔法を使い、過去に飛び、まだ、大きな力を持っていない魔王を殺害することを命じられたのだ。 (残酷な決断だ)  時渡りを命じられた勇者は考えていた。今の魔王はともかく、過去の魔王に罪はない。それを、実行することが正しいことであるとは、どうしても思えなかった。  魔王の事情も知っていた。国の英雄がどうして、変貌したのかを。  しかし、勇者にも事情があった。現在、彼女の両親は、連合軍によって、監視されている。  もしも、自分が連合軍に逆らえば、両親はただでは済まないだろう。その考えの元、勇者は過去に向かう選択をするしかなかった。 「時渡りを始めよう」  勇者は目を閉じ、夢想する。周囲に魔力を集中させ、体の力を抜く。 (今から、数十年前の時間へ飛ぶ)
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