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その日、私は朝日に起こされた。カーテンから零れる光に刺激されて、目を開ける。そこは、昨日の夜と何も変わっていなかった。
空っぽのビールの缶、封が開けられたお菓子の袋。私は昨夜、ユウイチを待っているまま寝てしまったのだと気がついた。そしてそれと同時に、昨日からこの部屋にユウイチの気配がないことを察した。
それでも、私は希望を捨てきれず、ユウイチの寝室へと行く。そういえば、昔は二人で一つの寝室を使っていたな、なんてことを今さら思い出した。寝室を分けることになったのも、帰るのが遅くなるからってユウイチが言ったからだっけ。あの頃から、もうユウイチの気持ちは私から離れていたのかな。
私は唇を噛みしめて、寝室のドアを開く。そこは案の定空っぽで、自分がベッドメーキングしたままの、シワのないシーツがやけに目に付いた。
私は声にならないくらい小さな息を、ゆっくりと吐き出す。二人の終わりを感じた瞬間だった。
私は自分の部屋へと行き、身支度と必要最低限の荷物をまとめる。最後までユウイチに対して何も言えない弱虫な自分に嫌気がさしながらも、私は彼との別れを決意した。もうこれ以上、ユウイチの幸せを引き留めるような真似はしたくない。
「さようなら。今までありがとう。あなたと過ごした日々は幸せでした。どうか、お幸せに」
最後にそう手紙を残して、私はたくさんの思い出が詰まった3L D Kの部屋を後にする。頬を伝った涙には、気付かないふりをして。
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