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   ◆  はっと目が覚めて、私は首元に手をやった。銀色のリングがついたネックレスは、確かにあった。私はほっとして、ベッドの脇に置いてあったスマホを見る。彼が来るまで、あと二時間あった。  少しずつまどろみから覚めていく中、先ほど見ていた夢がまだ尾を引いていた。彼を抱きしめた温かさがまだ残っているような気がした。またあの幸せなときに戻りたくなって、私はもう一度目を瞑った。  フラッシュバックのように彼との時間が頭の中に流れてくる。そして終わりが見えてくるのが怖くて目を覚ました。私は起き上がり、シャワーでも浴びようと思って寝室を出た。窓の外には、まだ夜が残っていた。  パジャマを脱ぐと、自分の身体の線が見えた。決して細くはない脚、少しくびれたお腹、華奢な肩。彼に好きになってもらえるように少しだけダイエットもした。そんなことしなくていいのに、と彼は笑って言っていたけれど、私はまだダイエット生活のままだ。  首元に光るネックレスは外せない。もらったその日から、外したことがない。外してしまえば、何かが崩れてしまいそうな気がして怖かった。  裸になると、冬の寒さが針のように感じられる。急いでお風呂場に入り、シャワーの水を出した。すると冷たい水が降ってきて、慌てて温かくなるように設定した。シャワーの水がじんわりと温かさを取り戻す間、私はお風呂に備えられた鏡をじっと見つめていた。  一通り洗い終わって、シャワーを止め、浴槽のふちに座る。水滴が次々と私の身体を伝った。ぽたぽたと髪の毛を纏っていた水が太ももに落ち、冷たく感じる。やわらかいねと言ってくれた手。いい匂いがすると近づかれた首元。彼に愛されていたどれもが、水で洗い流されてしまったような感覚がして、私はそっと、首元にあるネックレスに触れ、握りしめた。こんなにも一人でいるのに、彼のことが頭から離れずにいる。ネックレスを感じることで、彼を感じるような気がした。  お風呂から出て、ドライヤーで髪を乾かしている時、今日は何を着ていこうか迷った。前は相当気合を入れてしまったため、今回はできるだけラフで、それでいて素敵だねと言ってもらえるような服を着たい。つけていくイヤリングは、唇に重ねるリップは、といろいろ思案しているうちに、髪の毛が乾いて、さらさらと流れるようになった。
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