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 クローゼットから、薄紫色のワンピースを取り出す。名前の通り、その色が似合うよと言ってくれた彼の言葉を思い出してのことだった。イヤリングは控えめに、唇はピンク色に彩られていく。私が、変わっていくのがわかる。淡く浮き立つ心模様を反映するかのように、外は朝の空気に変わりつつあった。  彼が乗る深夜バスは、午前四時四十五分に到着すると聞いていた。駅前まではそんなに距離はない。きっと彼を迎えに行ける。  私はリビングからベランダに出て、夜から覚める空を眺めていた。すると、一点の星が、きらきらと瞬いているのが見えた。  隣に彼がいたら、なんていうだろう。星がよく見える良い夜だったな、なんていうのだろうか。
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