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「お前、別にいいなって思ってないだろ」  唐突にそう言われて、私は驚いてその男の人を見た。縁の細い眼鏡に優しそうな顔立ち。そんな人からそう言われて、思わず「そんなことないです」と否定していた。 「私は本当に、いいなぁって思って言ったんです」 「違うだろ。隣に新しい友達がいるから、悪く思われたくなくて、いいなって言ったんだろ。そういうの、俺大嫌いなんだよね」  隣にいる友達がたじろいでいるのがわかる。それでも私は意見を曲げたくなかった。 「私はそんなことしません。きれいなものはきれいって言いたいだけです。誰かのことなんて関係なく」 「ふうん、じゃあそういう人だって証明して見せてよ」 「どうやってですか」 「入部して」  私は思わず目を見開いた。まだまだ見たい部活はたくさんあるのに、その証明のためだけにこの部活に入るのか。それでも、一歩も引きたくない私は言ってのけた。 「わかりました。天文部に入部して、私がどんな人かを先輩にみせつけてやりますから」  そう啖呵を切って、私は友達と二人で教室を出た。友達は「大丈夫?」と心配しながらも楽しそうで、私は「泣いて謝らせるから」と言うと、さらに笑った。
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