Christmas song

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 ぼくは……君をたくさん傷付けたのに、自分が傷付くのは怖かったのです。そして、それは今も変わりません。 「夏緒先輩は、どうしてそんなことを勝手に決めるの……会わないでおこうね、ってなに。こうしてまた会えたのに、なんでそうやって……」  ああ、また。  また、ぼくはラギ君を傷付けてしまいました。 「ごめんね……ラギ君は少しも悪くないのにね。ぼくが……ぼくに勇気がないだけで、いつも君を傷付けてしまう」 「そんなに人目が気になる?」 「だって……ぼくにとってラギ君は、太陽で、夏の青空で、イルミネーションよりイルミネーションで……ぼくは日陰に生えている雑草みたいな存在だから、眩しくて暖かすぎて焼け死んでしまいそうになるんだよ」  ひっそりと見ているくらいがちょうどよかったのです。雑草は雑草らしく踏まれても気付かれないくらいの存在でいなければならなかったのです。 「なんだよ、それ。少しもわからない。太陽が青空がイルミネーションが、雑草に恋しちゃダメなの? 俺にはそんな自由もないの? つうか、夏緒先輩は雑草なんかじゃないし」  少し声を荒げたラギ君の口から、白い息が舞っては蒸気となって消えていきました。 「ラギ君……ぼくは、ぼくはね、もうイルミネーションを綺麗だと思えなくなったんだ。君のほうが遥かに眩しいし、君と……君と見た、全ての景色が、今も……鮮やか、すぎて……」
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