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「梅田ぶちょ―。水まき終わったけど」
「お―。サンキュ」
じゃホース片付けといて、と梅田が言うので、私は水を流すのをやめたホースをぐるぐる巻きにして、温室内の棚に戻した。
温室にも外の花壇にも畑にも、たくさんの種類の植物が植えてあり、水の粒をまとってキラキラ、いきいきとしている。私はそのほとんどの名前も育てる方法もわからないけれど、梅田は全部ちゃんとわかるのだと思う。
「夏休みだってのに悪ィな」
そういう梅田はなんだか知らないピンク色の花を手入れしてるところで、私に背を向けてしゃがんだまま。
ちょっとくらいこっち見てくれてもいいのにな。
という気持ちが、自分の表情にありありと表れているのが、鏡を見なくてもわかる。もし梅田に見られたら一発で伝わるだろう。でも梅田は背を向けているから、気づかない。
私は肩をすくめて、言う。
「ま、一応部員ですから」
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