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降ってくるような空の青の、真夏の世界に包まれる。ひまわりは温室から少し離れた、花壇の隅にひっそりと立っていた。
「おぉ、ほんとだ」
中心に沢山できた種を見ると、なんだか感慨深い。種をぬいてメッセージが読めるようにしているのを見たことがあるけど、たしかにこれを見るとやりたくなる。
じっと見ていたら、ひまわりの首はまっすぐではなくて、どこかを向いて曲がっていることに気づいた。視線をその方向に向けると、そこには、太陽があった。
「…そっか」
光合成ができれば、息苦しくなることなんかない。まして、太陽になんて、焦がれれば焦がれるほど、酸素が作られ、呼吸がしやすくなるはず。…と思ったけれど、はたして、本当にそうだろうか。
だって太陽は、たくさんのものから愛されている。でもたったひとりしかいなくて、その愛を独占することはできない。
ならば、焦がれても焦がれても、ずっと息苦しいままなんじゃないだろうか。
こんなに光を集めても、こんなに光合成をし続けても、まだ足りない。永遠に息苦しい。
「…君は、そんな憂鬱と闘っているわけだね」
それでも、太陽を見つめてまっすぐ立っている。そんなひまわりを育てて、よかったと思った。
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