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途中、不安になったのか立ち止まってこちらを振り返ったので、瞬平はいたずらっぽい笑みを浮かべ、早く行けと言わんばかりに、動物を扱うように右手をしっしと振った。フレディーは店内に恐る恐る足を踏み入れる。どこに地雷があるかわからない戦いが今始まろうとしていた。
二人は横にほどよい仕切りのあるテーブルにつき、腰かけた。その様子を見計らうと、瞬平もそっと店内に入り、チビメガネの後ろ側になるよう、席につく。
フレディーはこちらに気がつくが、緊張しているのか何の反応もない。これは出番が早くきそうだと瞬平は苦笑した。
「光ちゃんごめんね、突然呼び出して。わかってると思うけど今日は大事な話があるんだ」
光ちゃんと呼ばれた男は、指で眼鏡をくいっと押し上げるとやれやれと重い口を開く。
「どうせまた別れ話でしょ」
「うん」
「僕は別れないよ」
「そんなこと言わないでよ。オレはもう光ちゃんを恋人には見れない。友達に戻ってほしいんだ」
近くで聞き耳を立てていた瞬平は、
(何、生温いこと言ってんだ、あいつは)
と眉間にシワを寄せた。
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