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「エクアドル!」  そう最初に呼んできたのが瀬尾瞬平だった。彼は可愛らしい顔立ちで、明るく、男子からも女子からもモテた。そんな彼がこういうことを言うものだから、みんながフレディーのことを〈エクアドル〉と呼ぶようになったのは偶然にして必然。  エクアドルと呼ばれることにそれほどの抵抗はない。見た目はエクアドル人だし否定するのもおかしい。問題はそのあとだった。知らない人にもエクアドルと呼ばれ、筆箱を隠されたり、リコーダーを隠されたり、ランドセルを隠されたり、ひどいときは物を壊されたり、小さないじめが続きもう散々だった。しょっちゅう上靴を探しに学校中をうろつき無駄な時間を費やした。  誰ということはない、誰もがするから収拾がつかないのだ。先生は注意をするが、みんな先生の前では神妙な面持ちこそすれ、いじめをやめることはなかった。  母に学校に行きたくないと何度も懇願するが、楽観的な彼女は 「そんなこと気にしなくていい。あなたはかっこいいんだから堂々としてればいいのよ!」 なんて言ってくる始末だった。
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