3/12
前へ
/113ページ
次へ
 かっこよさなど求めてはいない。生まれも育ちも国籍も日本なのだから、もっと日本人らしく、目立たない慎ましやかな姿に生まれてきたかった。  毎日足が重く、保健室登校でもあれば少しは気が楽だったろうに誰も提案してはくれなかった。フレディーは中学に上がって、それをしている人を見て初めて気がついたのだ。自分も教室にだけは入りたくなかった。保健室でいいなら保健室がよかったと。  中学はわざわざ知っている人がほとんどいない学校を選んだ。さすがにそれは母も率先して探してくれた。  瞬平がいじめをしていたかはわからない。だが発端を作ったのは間違いなく彼であり、そんなわけで彼がトラウマになっていたのだ。 「エクアドル……だよな?ごめん、名前覚えてなくて」 「フレディー・モラスだよ」  半ば投げやりで目も合わせず答える。 「そうそう、フレディー!小学生以来だよな」  フレンドリーに話しかけてくる瞬平に対して、つーんと澄ました態度を取る。 「フレディーって呼んでいいの?」 「どうぞご勝手に」  
/113ページ

最初のコメントを投稿しよう!

193人が本棚に入れています
本棚に追加