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「とにかく、もういいよ。昔の話だから」
「本当に?」
「本当に」
「怒ってない?」
「当時だって怒ってなんかないよ!悲しくて悲しくて学校に行くのがイヤで、ごはんもろくに食べられなかったんだ」
「……うん、そうだよな」
「でも本当にもういいよ。瞬平くんの気持ちはわかったから」
「……うん、ありがとう」
瞬平は少し儚げに笑う。本気で申し訳なく思っている様子がわかり、何だかかわいそうになる。
「ところで、どこ行くの?」
「オレ?」
「この時間だと……遊び行くとこだよな?」
「……ん、まあ。瞬平くんは?」
「部活帰り。みんなで昼飯食ったあと……かな」
そう言って、足元に隠すように置いてあった大きなバッグを指さす。バッグの上側に丸み帯びた部分があり、中にマイボールが入っていると想像して、練習熱心さに舌を巻く。
フレディのマイラケットやマイボールとはわけが違う。野球部やテニス部、アイスホッケー部なんてもっとだし、道具が大きいとそれだけで気が重くなる。フレディーは、そういう感覚しか持ち合わせていないから、スポーツが好きじゃないんだろうなと自分を分析した。
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