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初めて結ばれた夜
しばらくして、ひろみは
自分の体を起こした。
「拓哉、あたしを抱いていて」
オレの腕の中で安心したひろみが、
オレに言った。
「さっきは怖かった。
拓哉が来てくれなかったら、あたし…」
「もう忘れろ。
何も起こらなかったんだから」
「さっきの拓哉、怖かった。
あたし、まだ体が震えている」
「さっきは、悪かった。
ひろみ、オレはおまえを愛している。
おまえだけは、誰にも渡したくない」
「あたしも、あなたを愛しているわ。
あたしは、あなたのそばにいられて
幸せなの。だからあたしのすべて、
あなたにあげます」
ひろみから思いがけない言葉が
返ってきてオレは驚いた。
これで、もう渡ってはいけない橋を
渡ることになってしまったのだと
オレは、そう思った。
「ひろみ、いいのか?」
「あたし、拓哉となら
そうなってもいいって思っていた。
だけど、怖かったの」
「怖がることないよ。
オレとおまえのつながりが
変わるだけだ。ひろみ、オレは
愛している。おまえだけを…」
オレはそう言って、
ひろみを抱きしめてキスをしていた。
渡ってはいけない橋を渡ったら、
後戻りはできない。
だけどオレは、後悔はしない。
オレとひろみの絆がつながるのなら、
それでいいのだから。
「今夜、オレがおまえの部屋に行く。
尚志が寝た頃を見計らってくるから
待っていてくれ」
「わかったわ」
「ひろみ、本当にいいのか?」
「後戻りするなら、先に進めばいい。
だから、後悔はしない。
あたしは、あなたを愛しているから
何もかも許せる。ただそれだけよ」
いつのまに強くなっていったんだろう?
初めて会った時は、おとなしかった
ひろみが今では強くなっている。
愛することで、人はこんなに
変わっていくものなんだろうか?
オレは、ひろみの言葉に
自分の迷いが消えた。
ひろみと一緒に先に進もう。
そしてその日の夜、
オレは尚志が寝たのを見て、
部屋を抜け出そうとしていた。
「拓哉」
「尚志、起きていたのか?」
「おまえが、何をしようと
しているかわかっているぜ」
「おまえの目は、
ごまかせないってことか」
「当然だろ、だてにチビの頃から
つるんでないんだぜ。
おまえの考え、当ててやろうか?」
「何のことだ?何を言わんと
しているんだ?」
「今のおまえは、ひろみさんの事件で
頭にきている。
レイプされそうになったひろみさんに、
何があるかわからない。
今夜は、ひろみさんのそばにいて
やりたいと思っている。違うか?」
「やっぱり、おまえには
ウソがつけないな」
「親友と一言言っておく。
おまえが、ひろみさんと深い仲になろう
としているなら、ひろみさんを
傷つけることだけはやめてくれ!
言っている意味、わかっているよな?」
「わかったよ、尚志。
おまえの忠告、胸におさめておくよ。
オレは、ひろみを傷つけたりしない。
ひろみは、オレのたった一人の
愛しい女だからな」
「それを聞いて安心したよ。
オレは、寝るから」
尚志はそう言って、
自分のベッドに入った。
ありがとう、尚志。
やっぱり、おまえは一番の親友だよ。
オレのことを一番にわかって
心配する唯一、本音で話せるヤツだよ。
ありがとう、おまえの心
確かに受け取ったぜ。
それからオレは、
隣のひろみの部屋に行った。
ひろみが部屋のドアを開けると
オレは、すぐに部屋に入った。
オレは、部屋に入ると
ひろみを抱きしめていた。
「ひろみ、今ならまだ間に合うぜ。
オレたち、今渡ってはいけない橋を
渡ろうとしているんだから」
と自分の覚悟を言った。
「自分が覚悟しているなら、
もう迷わないで。
あたしは、あなたについていくから」
とひろみは言った。
「ひろみ、オレについてきて
くれるのか?」
というオレに、
「えぇっ、あなたを愛しているから。
あたしは、あなたにずっと
ついていきます」
とひろみは、言ってくれた。
もう、迷いは消えた。
オレは、ひろみを抱きかかえて
ベッドに行った。
少し広めのベッドで、二人が眠るには
ちょうどいい広さだった。
「ひろみ、いいよな」
ひろみは、返事の代わりに
コクンとうなずいた。
「ひろみ、これはオレとおまえの
つながりが変わる儀式だ。
いいな、手荒くなるが我慢してくれ」
オレは、そう言ってから
ひろみにキスをして自分の体を重ねた。
そしてキスをしながら、
ひろみの服のボタンをはずして、
ひろみの胸に顔を埋めた。
さっき、シャワーを浴びたのか、
石けんの香りが残っている。
オレは、その香りに
しばらく酔い痴れていた。
そして、その香りに
酔い痴れたオレは、
ひろみの胸に触れてみた。
「あぁっ、拓哉」
ひろみが、かすかな声であえいでいる。
「ひろみ、好きだ」
そう言ってオレは、
ひろみの肌に何度も触れていた。
ひろみは、オレが肌に触れるたびに
オレの髪を何度もなでてくる。
懐かしい香りに包まれて、
やがてオレたちは一つになっていった。
オレとひろみは、生まれたままの
姿になってベッドにいた。
ベッドでオレは、
ひろみを抱きしめている。
ひろみもオレの腕の中で体を預けていた。
「ひろみ、大丈夫だったか?ごめんな」
「ううん、拓哉とこうなってよかった。
あたし、今幸せよ」
「ひろみ」
オレは、ひろみにキスをしていた。
これで、オレとひろみの絆が強くなった。
オレの隣に、ひろみがそばにいる。
それだけで、うれしかった。
「おいで、ひろみ」
その日の夜オレは、ひろみを腕の中に
抱いて二人でそのまま眠った。
懐かしい香りが、オレを包んでくれる。
この日の夜、オレとひろみは
心も体も離れられないくらい
深い絆でつながった。
これで、もう誰にもオレたちを
引き裂けない。
ひろみは、オレの愛しい女。
その愛しい女を誰にも渡さない。
オレは、隣に眠るひろみの寝顔を見て
そう思った。
それから一週間が過ぎ、
オレとひろみは、夜行列車で
帰ることになった。
「拓哉、登校日には戻るからな」
という彰に、
「おうっ、またな」
とオレは答えた。
「残念だわ。もう少し一緒に
いられると思ったのに…」
とがっかりしている絵梨ちゃんを
和彦はなだめていた。
「絵梨、しかたないだろ。
拓哉のタイムトラベルは
明日なんだから、今日帰らないと
オンエアに間に合わないだろ」
ひろみは、
「絵梨ちゃん、入団テスト頑張ってね。
あたし、待っているから」
と絵梨ちゃんを励ましていた。
絵梨ちゃんは、感激して
「ありがとうございます。
私、頑張ります」
と言っていた。
「拓哉、気をつけて帰れよ。
ひろみさん、またね」
と尚志は、気持ちよく
送り出してくれた。
そしてオレとひろみは、
夜行列車に乗り駅のホームにいる
尚志たちに手を振っていた。
オレとひろみが汽車に乗ったのを
見送った後で彰が尚志に言った。
「尚志、おまえ何か
気がつかなかったか?」
「何が?」
「拓哉だよ。あいつ、何も
言わなかったが、ひろみさんと
深い仲になったと思う」
「彰、どうして?」
「あいつは、オレとタイプが似ている。
拓哉がプラスなら、おまえがマイナス。
そしてオレもプラスで、
和彦がマイナスというようにな」
「プラスとマイナス?」
「そうだ。オレも拓哉もプラスだから、
かけ算してもプラスだ。
だから、オレとタイプが似ている。
おそらく、あの事件で頭にきていた
拓哉は、あの日の夜にひろみさんと
深い仲になった。違うか?」
「そんなことないよ。彰の考えすぎだよ」
「いや、拓哉はマジでひろみさんに
ほれている。あいつの心は、純粋だ。
だから純粋な気持ちで、ひろみさんを
愛している。
尚志、おまえは自分の胸の中に
おさめておこうと思っていたようだが、
オレの目はごまかせないからな」
彰は、オレと似ている。
それは初めて会った頃から、
オレも感じていたことだ。
彰の言うとおり、オレは
ひろみを愛している。
だからひろみを傷つけようとした
ヤツが今でも許せない。
だけど、この旅行でオレとひろみは
心も体も結ばれて深い仲で結ばれた。
だが、ひろみにストーカーの
危険が去ったとは言えない。
ひろみを傷つけようとした
ストーカーをたたきのめして
やりたいとオレは、ストーカーへの
怒りと憎しみでいっぱいであった。
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