結婚への道のり

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結婚への道のり

それから、オレが停学の期間を利用して オレとひろみは、 それぞれの親たちに会いに行った。 ひろみの家族は、 日舞藤村流の家元である父親。 そして、以前ひろみが 病気になった時に会った母親。 そして産婦人科の医者であるおじいさん と華道と茶道の師匠のおばあさんがいる。 ひろみは、その家族の一人娘。 オレのことを認めてくれるか不安だった。 「ただいま」 「まぁ、ひろみ。どうしたの? 急に帰るからって電話してきたから 心配していたのよ」 「お母さん、今日帰ってきたのは 話したいことがあったの。 お母さん、覚えているでしょ? 拓哉くんのこと」 「まぁ、拓哉くんが来ているの? 早く、こちらに連れていらっしゃい」 「こんにちは」 オレは、ひろみに促されて 家の玄関に来ていた。 「拓哉くん、よく来てくれたわね。 いつも、ひろみと仲良くしてくれて 本当にありがとう。 あなたとお付き合いするようになってから、 ひろみも元気になってきたんですもの。 ここではなんだから、 あがってちょうだい。 ひろみ、お父さんも今いらっしゃるから、 ゆっくりお話したらいいわ」 「拓哉、入って」 ひろみにそう言われて、 オレは家の中に入って 奥の大きな客間に通された。 ひろみは自分の部屋へ行き、 和服に着替えて客間に戻ってきた。 ひろみの和服姿にドキッとした オレにひろみは、 「あたし、家では和服着ているの。 拓哉には見せたことなかったから びっくりした?」 と言った。 「驚いたよ、違う人見ているみたいでさ」 ひろみは、ドキドキしている オレを見てクスクス笑っていた。 それからしばらくして、 ひろみのお父さんが客間に入ってきた。 「ひろみ、家に帰るからって 連絡が来た時は驚いたよ。 話したいことがあると 母さんから聞いていたが 彼のことのようだね」 「はいっ、お父さん」 「はじめまして、城島拓哉です」 「キミのことは、家内から聞いている。 ひろみが病気で入院していた時に、 見舞いに駆けつけて 二人が交際していると聞いている。 ひろみは、もともと体が弱い。 劇団に入団させたのは、 社会勉強のためにと思い入団を許した。 いつかは劇団を抜けて 静かに暮らしてほしいと願っている。 拓哉くん、今のひろみを受け止めて 幸せにしてくれるかね」 「お父さん、それって私たちのことを…」 「ひろみ、おまえたちの仲を認めよう。 拓哉くんは、おまえを幸せにしてくれる。 ただし結婚は、拓哉くんが 高校を卒業して芸の道を極めた時だ。 今の彼なら、しっかり精進するだろう」 「お父さん、ありがとう」 「ありがとうございます。 必ず幸せにします」 ひろみのお父さんが、 オレを認めてくれた。 オレとの結婚を認めてくれた。 これで道筋は決まった。 あとは、ひろみと二人でたどるだけだ。 それから三日後に今度は ひろみに、オレのおやじたちを 会わせることになった。 しかし、オレのおやじの悪い癖は酒。 昼間でも、夜でも、 関係なく飲むから心配だ。 「ただいま、母さん」 「お帰りなさい。 拓哉、そちらのお嬢さんは?」 「オレの彼女の石川ひろみさん。 タイムトラベルで 一緒に仕事しているんだ。 ひろみ、オレの母さんだよ」 「はじめまして、石川ひろみです」 「はじめまして、拓哉の母です」 「母さん、おやじ帰っているかな?」 「ちょうど、今帰ってきたところよ」 「酒、飲んでいないかな? 話があるんだよ」 「それなら、大丈夫よ。 今、お酒を持っていくところだったから、 ちょうどよかったわ。 どうぞ、ひろみさん。 あがってちょうだい」 「おじゃまします」 家に入るとおやじは部屋にいた。 オレは、ひろみを おやじのいる部屋に連れてきた。 「拓哉、帰ってきたんか」 「おやじ、話があるんだ。 酒、飲まないで聞いてくれるかな」 「なんや?話って」 「オレの彼女が来ているんだよ。 おやじに紹介しておこうと思って。 ひろみ、入っていいよ」 オレは、そう言って部屋に ひろみを連れてきた。 「オレの彼女、石川ひろみさんだよ」 「はじめまして、石川ひろみです」 「拓哉、かわいい子やないか。 おまえには、もったいないわ」 「おやじ、オレは彼女と一緒になりたい。 自分で、舞台や芝居の力つけてから 彼女と結婚したいと思っているんだ。 オレたちのこと、認めてくれないか」 「拓哉、おまえが結婚したいならワシはええぞ。 おまえが真剣にほれた女やさかいな。 しかし、まだ芸の道を極めてないおまえや。 これをきっかけに、芸の道をしっかり極めて 彼女と一緒になったらええやろ」 「ありがとう、おやじ」 「これは、明美への土産話になるわ。 おまえが、芸の道を極めようとしているってな。 ひろみさん、拓哉を頼むわな」 「はいっ、ありがとうございます」 おやじが、ひろみを認めてくれた。 これで、二人で進む道筋が決まった。 いつか、必ずひろみと一緒になる。 それまで、自分自身の芝居の力を必ずつけて、 ひろみを迎えに行くとオレはそう誓った。 オレは、その日の夜 ひろみを送って家に帰ってきた。 家に帰ってきたオレは、 仏間でおやじが遺影を取り出して じっと眺めているのを見た。 「おやじ、その写真」 仏間に入ったオレは、 おやじに遺影が誰か尋ねていた。 「おまえの母さんの明美や。 どうや? あの子、ひろみちゃんに似ているやろ?」 母さんの遺影を初めて見たオレは驚いた。 遺影に写っていた母さんの顔が、 ひろみによく似ていたからだ。 「驚いたよ。ホントにひろみに似ている」 「今日、おまえがひろみちゃんを 連れてきた時は驚いた。 明美が生き返って、 家に帰ってきたんかと錯覚してしもた。 拓哉、ひろみちゃんは 明美が引き合わせてくれたんやな。 ワシはな、今まで明美の遺影は 飾ることができんかった。 だけど、ちゃんと 飾ってやらんといかん時が来たんやな。 ワシは明美に先立たれたが、 おまえという形見が残った。 拓哉、ひろみちゃんの病は 精神的なものやと聞いている。 あの子は、劇団にいるより 静かに暮らさせるほうがええやろ。 あの子をしっかり守って幸せにしてやれ」 「ありがとう、おやじ」 おやじは、オレの生みの母さんを愛していた。 オレを産んで亡くなった今でも おやじは、オレの生みの母さんを 忘れていなかったんだ。 オレも、ひろみを愛して 幸せにしてやりたい。 オレは、生みの母さんの遺影を見ている おやじを見てそう思った。
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