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突然のライバル宣言
オレたちが話をしている間に
担任の小川が教室に入ってきた。
「起立」
彰のかけ声で、クラスの全員が
席を立った。
「礼」
「おはようございます」
「着席」
彰のかけ声で、全員が席を座った。
「クラス全員がそろったところで、
あらためて二学期からのクラス委員の
件について話をする。
飛島、二学期からも引き続き
正委員をやってくれ」
「はいっ、わかりました。
皆さん、二学期からも僕が引き続き
正委員を引き受けることになりました。
一学期同様、よろしくお願いします」
彰の言葉にクラス全員が拍手をした。
そして先生から正委員のあいさつを
した彰に言った。
「飛島、サブのクラス委員は、
おまえ自身が推薦してクラス全員で
判断することになっている。
飛島、誰か適任者を考えているか?」
彰は、何のためらいもなく
先生に言った。
「オレは、サブのクラス委員を
城島に任せたいと思っています」
彰の突然の言葉に驚いたオレは、
「えーっ、オレ⁉
彰、オレ自信がないよ」
と言った。
「拓哉、自分自身の力をつけたいなら、
今までやってないことから始めてみろ。
クラス全員を束ねるのだって、
いつかは自分の芸の力をつけるのに
必ず役に立つ。
オレは、おまえを信じている。
おまえとなら、一緒にクラスを
束ねていける。
自信を持って受けてくれ」
オレは、彰からの思いがけない
言葉に驚いた。
クラスを束ねるのも、
自分自身の力になる。
彰の言葉を信じて、オレは覚悟を決めた。
「わかったよ、彰。オレ、やってみるよ」
「ありがとう、拓哉。
オレと二人で、クラスの大掃除
やってやろうぜ」
オレと彰のやり取りを聞いて、
先生は静かに言った。
「他のみんなは、サブのクラス委員を
城島に任せるのに反対の者はいないか?」
クラスの連中は、サブのクラス委員を
オレに任せるのに賛成した。
彰と二人で、クラスを束ねていこう。
オレ自身のためにも頑張ろうと
そう思った。
さて今日の夜は、タイムトラベルの
オンエアの日でもあった。
オレは、停学がとけて
初めての学校で起こったことを
寛さんや洋さんに話をしていた。
そう、彰からクラス委員を
やってくれと言われたことも…。
そしたら、寛さんからこう言われた。
「そいつ彰は、おまえより大人だな。
同じ16なのに、一歩先を見て
判断している。
優等生というわけではないが、
委員を任されるということは
頭の切れるヤツだな。
おまえにサブを任せると
判断したのは、必ず何かで
役に立つと思ったんだろうな」
「拓哉くん、学校のクラス委員を
任されるということは一見難しいと
思うけど、必ず自分のために
プラスになって返ってくると思うよ。
頑張ってやってごらん」
寛さんや洋さんに話して
少し気持ちが軽くなった
オレは、気持ちも
新たに頑張ろうと思った。
「おはようございます」
ひろみがスタジオに入ってきた。
「ひろみ、おばあちゃんの具合は
どうだった?」
「うん、軽い風邪をひいたみたいなの。
肺炎になるかもしれないから、
1週間入院することになったの」
「そうか、大変だな。
日曜日にオレ見舞いに行ってみるよ。
おまえも、その時に戻るんだろ?」
「うん、お母さんが一人じゃ
大変だから帰る予定にしている」
「おばあちゃん、働きすぎだからな。
いい休養になるんじゃないか」
「そうね」
停学期間中に、寛さんの公認の仲に
なったオレとひろみ。
今では堂々と二人で話をしている。
そんなオレたちを見て洋さんは、
寛さんに話をしていた。
「寛くん、拓哉くんと裕美ちゃん
本当に仲がいいね」
「今の拓哉なら、
裕美を安心して任せられます。
裕美にとって拓哉は、
一番安心できる存在ですからね」
「拓哉くんも裕美ちゃんと
出会ってから大人になったね。
まだ勇次師匠のそばで
仕事していた時は、あんなに
小さい子供だったのに…」
「まだ二人は若いから、
これからのことは大人のオレが、
静かに見てやらないと思って
いるんですよ」
「それが、一番だと僕も思うよ。
寛くん、僕も一緒に二人を
見守っていくよ」
「洋さん、あなたには
人生の先輩として助けてもらうことに
なると思っています。
これからもよろしくお願いします。
拓哉と裕美を含めて」
寛さんと洋さんが、大人として
オレとひろみのことを静かに
見守ってくれる。
まだ16のオレには心強い味方ができた。
これからいろいろ悩むけど、
寛さんや洋さんがいれば、
自分が社会に出た時の力を
つけられるとオレは思った。
そしてラジオの番組が終わってから、
オレとひろみは、前に一度来た
公園に行った。
「拓哉は、クラス委員を
引き受けることになったのね」
「あぁっ、彰に頼まれてな。
しかたないよな、前のサブの
クラス委員だった大森は、
予備校に通っていたから
委員会に出てなかったからな」
「あたし、思うんだけど
拓哉と彰くんは、きっといい意味で
ライバルになるんじゃないかしら。
彰くんが、拓哉にクラス委員を
任せたいと思ったのは、
彰くんが拓哉を自分のライバルと
認めたんだと思うの」
「彰がオレを?そんなことないよ。
あいつは、いつも一歩先を見て
判断していてオレより大人だよ。
そんなヤツから、クラスを
束ねていけるのはオレだって
言われて驚いているのに、
ライバルなんて無理だよ」
「無理なんてことないと思う。
あなたは、彰くんに近づきたいと
思っているはずよ。
いい意味で、負けたくない
相手になりたい。
あなたは、そう思って
いるんじゃないの?」
ひろみの言うとおり、
オレは彰に負けたくないと思っている。
それは、いい意味で好敵手として
彰に近づきたい。
だから、彰にクラス委員を
やってくれと言われた時も
オレは引き受けようと思った。
この後、高校3年間
つるんでいくうちに、
彰に近づきたいと
そう思ったのも事実だ。
「なぁ、ひろみ。
オレさ、彰のライバルになれるかな?」
「そうなりたいと思うならやれるわよ。
あなたなら、きっと」
ひろみに励まされたオレは、
うれしい気持ちになっていた。
ひろみの笑顔を見るといつも安心する。
オレは、ひろみを抱きしめて
キスをしていた。
「ひろみ、やってやるよ。
見ていてくれ、必ず彰に近づいてやる」
そう自分自身の力をつけて、
必ずひろみを迎えに行く。
ひろみを必ず幸せにしてやりたい。
オレは、ひろみを抱きしめて思った。
「拓哉、頑張ってね。
勉強にも、仕事にも」
「あぁっ、もちろんだぜ。
見ていてくれよな」
ひろみに励まされたオレは、
必ず実力をつけてみせると
決意を新たにした。
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