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学校生活
タレントの活動しているとはいえ
オレは、まだ中学生。
高校に進学するか専門学校に行くか
という進路の話は、
中学3年になるとやたらとうるさい。
オレ自身は勉強が嫌いで、
高校への進学なんて
まったく考えていなかった。
「あーぁ、退屈だな」
「拓哉」
「おう!尚志」
こいつ、西崎尚志。
オレの腐れ縁の親友。
おやじたちが漫才やっている縁で
チビの頃からつるんでいる。
「宿題、やってきたか?」
「えっ、宿題?何かあったか?」
「やっぱり、忘れてきたな。
次の時間の数学の宿題」
「えっ、忘れた」
自慢じゃないけど、オレ数学は大嫌い。
方程式の計算問題なんて
面倒くさいし頭が痛くなる。
「ほらっ、早くノートを貸せよ。
答えを書いてやるから」
「サンキュ、助かったぜ」
オレは、尚志に数学のノートを投げた。
そして尚志が、オレのノートに
宿題の答えを写しながら言う。
「しかし、おまえって変わったヤツだよな」
「何が?」
「数学が嫌いってこと」
「あんな面倒くさい公式、
頭が痛くて覚えてられるかよ」
「担任の授業なのだから
マジメにやれよ。内申書にひびくぞ」
「シーラカンスババァだぜ。
冗談じゃねぇよ!」
「シーラカンスババァ?
でも、当たっている」
「だろう?
行かず後家で、ヒステリックババァ。
まともに聞いていたらキリがないからな」
「ほらっ、テキトーにごまかしといた」
そう言って尚志は、オレにノートを投げた。
「いつも悪いな」
「長年の腐れ縁だからな」
こうして話せるのも、
親友だからかもしれない。
こうして、タレントの仕事を離れて
話ができるのも尚志だけだろう。
「ところでさ」
尚志が、オレに聞いてきた。
「朝霧裕美さんってさ、美人なんだって?」
「うん、そうだな」
「ドリームランドの女優さんって、
美人ばかりだからなぁ。
拓哉が、うらやましいぜ」
尚志は、これはチャンスだと
思ったのかオレに、
とんでもない頼み事をしてきたのだ。
「拓哉、オレの妹が
裕美さんのファンなのだよ。
おまえ、裕美さんのサイン
もらってきてくれよ」
オレも突然だったので、
「えっ?裕美さんのサインを?」
と驚いて聞き返していた。
すると尚志は、オレの返事を待たずに
「頼むよ、拓哉。今日の宿題の借りに」
と言ってきたのだ。
そう言われると、オレも根負けして
「わかったよ。
裕美さんに会ったら頼んでやるよ。
それで、今日の宿題はチャラで」
と尚志に言った。
そしたら尚志は、
「ありがとう、恩に切るぜ」
と喜んでいた。
あーぁ、こいつチャッカリとしているぜ。
オレの気持ちも知らないで
いい気なものだぜ。
しかし、こんなふうに学校生活送るのは
いつまでなのだろう。
なんてのんびりと考えていたオレだった。
尚志は、ドリームランドのファンで
舞台があると毎回必ず見ている。
だからドリームランドの女優のお茶会は、
尚志のおやじさんと一緒に行っている。
だから、今年の新人で入団した女優の
情報も早くから知っていたのだろうな。
さて、今日はラジオの
オンエアの日でもありました。
今日の裕美さんは、
何か悩んでいるみたいです。
「おはよう、裕美さん」
「あっ、拓哉くん。おはよう」
「何かあったの?」
とオレは裕美さんに聞いていた。
すると裕美さんは、
「たいしたことじゃないの。
進学のことだから」
と言った。
裕美さんは、確か今高校三年生だ。
進学ということは、まさか…。
そう思ったオレは、
裕美さんに思わず聞いていた。
「ねぇ、裕美さん。
進学ってもしかして…」
「うん、大学進学。
うちの担任は、短大進学を
推薦しているから悩んでいるんだ」
ひぇー、大学進学⁉
オレなんて高校の進学さえ
やばいと言われているのに…。
だけど、ここは冷静になろう。
裕美さんが悩んでいるんだからな。
気持ちが落ち着いたオレは、
「なんだよ、それ。ずいぶん理不尽じゃん」
と裕美さんに言った。
すると裕美さんは、
「そう思うでしょう?メガネババァ、最低」
とオレに言った。
「ねぇ、メガネババァって誰?」
とオレは、裕美さんに聞いていた。
すると裕美さんは、
「うちの担任のあだ名よ。
付け加えたら、チビだし行かず後家よ」
と言った。
それを聞いたオレは裕美さんに、
「オレの担任も行かず後家の
シーラカンスババァだぜ」
と言った。
なんだか、裕美さんと話す話題が
知らない間に自分たちの担任の
悪口大会になっていた。
だけど、裕美さんと二人で話せて
オレは、うれしい気持ちになっていた。
裕美さんも、オレと話したのが
よかったのか、少しずつ笑顔が戻っていた。
「なんだ、なんだ。二人とも
ずいぶん盛り上がっているな」
寛さんが、スタジオに入ってきた。
「担任の悪口大会ですよ。ねっ、拓哉くん」
「うん」
「悪口大会は、聞き捨てならないなぁ。
裕美、おまえの担任が
大学の進学を反対しているのは
聞いているが、もう少し冷静に考えないと
ダメじゃないのか?」
「冷静に聞けたら、私悩みませんよ。
うちの担任って、女が大学に行くなんて
とんでもないって頭が固いんですから」
寛さんと裕美さんの会話を聞いていた
オレは、裕美さんの担任がオレの担任と
いい勝負しているなと思った。
そして寛さんが、オレに聞いてきた。
「ところで、拓哉。
おまえは、これからどうするのだ?」
オレは突然だったので、
「何がですか?」と聞いていた。
すると寛さんは、
「おまえの進学問題のことだ!
おまえ、数学は方程式の計算問題を
見ただけで、頭痛がするほど
大嫌いな科目だというじゃないか!」
といきなり怒鳴ったのだ。
何で知っているんだよ?
寛さん、裕美さんの前で
オレの苦手なことを言わなくていいじゃん。
そして寛さんは、オレに言った。
「オレだって、長年ラジオの仕事を
やっているんじゃないんだぜ。
番組をサポートするメンバーのことは、
一人一人の性格を把握していって
仕事していくもんなんだよ。
とくに拓哉、おまえの場合は…」
「僕の場合はって、寛さん…」
すると寛さんは、間髪入れずに
オレに言った。
「おまえのおやじ、勇次師匠から
一人前のタレントに育ててくれと
頼まれているんだよ!
だからオレは、おまえを
育てていく義務があるのだよ!」
おやじが寛さんと?
いつの間に、そんな話をしたんだろう?
寛さんの言葉は続いた。
「拓哉、高校だけは
出ておいたほうがいいぞ。
中学とは違う体験があるし、
今の時代は高校卒業から
社会に出るほうが芸の幅が変わってくる。
今からでも遅くはない。
高校に進学を考えて、
頑張ってやってみろ!」
高校に行く?
オレが?
今まで考えたことなかった。
だけど、寛さんに励まされると
なぜか頑張ってみようと思ってしまう。
寛さんって、本当に不思議な人だ。
「僕、頑張ってみます。
多分、私立専願になるかな?
成績、悪いから」
「今のおまえができるところから
始めたらいい。
今からの頑張りが、必ずプラスになる。
それを忘れるな」
「はいっ!」
やっぱり、寛さんはすごいや。
オレは、そう思った。
そして裕美さんが、オレに言った。
「拓哉くん、一緒に頑張ろう。
拓哉くんは高校、あたしは、大学の進学。
二人で、一緒に頑張ろう」
裕美さんの言葉に、
うれしい気分になったオレ。
それを聞いた寛さんは、
「どうやら裕美は、
大学を受けるつもりだな」
と言った。
すると裕美さんは、
「大丈夫です。
自分の力、信じていますから」
と言った。
裕美さんの言葉に寛さんは、
「それなら、やるだけのことを
やって悔いのないようにやれよ」
と言った。
そしてオレも、
「裕美さん、頑張ってね。
オレも、頑張るから」
と言った。
やっぱり、裕美さんの笑顔かわいいなぁ。
彼女の笑顔で、
気持ちが温かくなってくるオレ。
いつかは、付き合えたらいいなぁなんて…。
えっ?どうしょう。
オレ、何を考えているんだろう?
オレ、オレ、
気持ちの整理がついていないよ。
裕美さんのこと、
ますます好きになっているよ。
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