新しい友達

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新しい友達

時は流れて桜の季節。 春になり、オレは高校生になりました。 今日は、学校の入学式なんだけど うちは、おやじが同伴。 尚志も今回おやじさんが同伴だから、 かなり目立っちゃっています。 「毎回、おやじがついてきてウンザリだぜ」 「しかたないよ、 うちも今回は父さんが付き添い。 高校は中学と違うから、 きちんと学校を見なきゃってね」 「オレのおやじも学校を見ないとって 言ってついてきて、いい迷惑だよ」 「なんだかんだ言っても おやじさんは、拓哉が心配なんだよ。 うちの父さんもそうだよ」 「そういうもんかな? おいっ、クラス表が張り出されているぜ」 「あっ、本当だ。行ってみよう」 オレは、尚志と一緒にクラス表が 張り出されている掲示板に行ってみた。 何しろオレの学校は、男子校だけに 学生服の人だかりができていた。 「拓哉、見ろよ。 オレたち、同じクラスだぜ」 「あっ、本当だ。 1年3組で、同じクラスになっている」 「拓哉、自分の出席番号を見た?」 「オレの出席番号は、18番だ。 尚志は?」 「オレのは、32番。離れちゃったね」 「おいっ、尚志。 それよりも教室に行こうぜ」 「そうだね、行こうか」 オレと尚志が同じクラス。 こんなに、うれししいことはなかった。 オレと尚志は、一緒に教室に行ってみた。 担任の先生が、教壇の前で座っている。 体育会系の男の先生だ。 オレたちは、後ろのドアから教室に入った。 「今の二人、出席番号と名前を 一人ずつ言え」 と先生のドスの聞いた声に驚いた オレたちは、 「18番、城島拓哉です」 「32番、西崎尚志です」 とそれぞれの名前を言っていた。 すると先生は、 「オレが、担任の小川だ。 城島の席は、岬の隣だ。 西崎の席は、飛島の隣だ。 早く、席に着け」 と言った。 オレと尚志は、 小川先生の言われた席に座った。 オレと尚志の席が前後でよかった。 オレは、自分の席に着くときに、 「よろしくな、岬」 と言った。 すると岬は、 「キミ、もしかしてタイムトラベルの 城島拓哉くんでしょ?」 とオレに聞いてきた。 オレは、 「そうだけど…」 と言った。 すると岬は、 「やっぱり、そうだったんだ。 クラス表に、拓哉くんの名前があったから、本人だったらいいなって思ったんだ。 本当に、同じクラスになってうれしいな。 あっオレ、岬和彦。よろしくね」 とうれしそうに答えた。 こいつ岬和彦は、 気さくで話しやすいヤツだ。 すると、尚志の隣の席の飛島彰も、 オレに話しかけてきた。 「こいつ、和彦は声優を志望していて、 三上寛に憧れているんだよ。 だから、三上寛のタイムトラベルは 欠かさず聴いているぜ。 あっオレは、飛島彰。よろしくな!」 飛島彰、こいつも気が合いそうなヤツだ。 こうしてオレは、尚志に加えて岬和彦と 飛島彰とつるんでいくことになった。 入学式の式典が終わり、オレと尚志は 彰と和彦と一緒に帰ることになった。 おやじたちは、仕事の関係で 先に帰ったようだ。 彰が、学校の帰り道でオレに言った。 「拓哉と尚志は、いいな。 おやじさんがそばにいるから。 オレと和彦は長崎から来たから、 おやじたちに会いたいと思っても 会えないからな」 そう彰と和彦は、 学生寮で暮らすことになったのだ。 「オレたちの寮、ここなんだよ。 たまには、遊びに来いよな」 「おうっ、またな」 そう言って、和彦と彰を寮で見送った オレと尚志は、しばらく黙っていた。 少ししてから、尚志からオレに言った。 「拓哉、オレたち父さんたちがいるのが 当たり前のようになっていたね」 「そうだな。 彰や和彦みたいに親元を離れてまで 頑張ったヤツもいたんだよな」 「オレたちは、それだけ幸せだよね」 「そういうことだな」 そう入学した仲間のなかには、 彰や和彦のように 親元を離れて入学した連中がいたんだ。 それだけ、オレたちの 学校の競争率は高かったのだ。 「ところでさ、拓哉」 「なんだ?」 「ひろみさんの大学の入学式、 もうすぐだろう?」 「あぁっ、もう引っ越しが 終わったんじゃないかな? ラジオのスタジオの近くで 部屋を借りたからって知らせてきたから」 「ひろみさん、一人暮らしするの?」 「それも、条件付きでな。 前に入院していた病院に必ず通って 薬を飲むことってさ。 しかたないよな。 あいつ、体に爆弾抱えているから」 「そうなんだ、また楽しみが増えたんだね」 「うん、そうだな」 「その幸せ、オレのおかげだからな。 あのまま話さなかったら、 今でも片思いのままだったからな」 「わかっているよ、尚志。 感謝しているよ」 「本当だよ。 おまえは、日舞藤村流の家元の一人娘に ほれられたんだからな」 「ほれられたんじゃないよ、 オレがほれさせたんだよ」 「言ってくれるじゃん」 二人で笑いながら駅まで歩いた。 これから電車に乗って、 家に帰るところだった。 家に帰ったオレは、 ひろみの部屋を訪ねた。 オレの家から目と鼻の先にある マンションの3階の部屋に、 ひろみは暮らしている。 ここだと毎日ひろみに会えるし、 ラジオのスタジオにも 通いやすいから好都合だ。 オレは、オートロックの カギの場所に行き、 ひろみの部屋の番号を押した。 ひろみから応答があったのでオレは、 「ひろみ、いるか?」 って言った。 「拓哉、来てくれたの? 今、開けるから待っていて」 と言って、ひろみがドアを開けて、 オレはマンションに入った。 オレは、マンションのエレベーターで、 ひろみの部屋に行った。 「拓哉、入って」 オレは、ひろみの部屋に入ると、 「どうやら片づいて落ち着いたな。 部屋らしくなったじゃん」 と言った。 するとひろみは、 「うん、あたしの荷物はそんなにないけど、家具や舞台で使う物が結構多かったからね。 拓哉、お昼まだでしょ? 何か、つくろうか?」 と言ってくれた。 「いいよ。 さっき、尚志と軽く食ってきたから」 とオレは言った。 「入学式は、どうだったの?」 とひろみはオレに聞いてきた。 「尚志と同じクラスになって、 また二人でつるむことになりそうだよ。 それもさ、奇妙な連中二人が加わって、 4人でつるむことになりそうだよ」 とオレは、ひろみに言った。 「どんな子なの?」 とひろみは、興味津々に聞いてきた。 「一人は和彦。 こいつは、声優を志望していて 寛さんのファン。 卒業したら、声優の養成所で 勉強するって頑張っている。 もう一人は彰。 ミュージシャンになるのが夢で、 ギターが得意なヤツ。 それに、入学式で総代をやっていた 秀才でもあるね」 「そうなんだ。 二人ともそれぞれの夢を持って 頑張っているのね」 「そうなんだよ。 彰や和彦みたいに芸能界で 頑張ろうとしている連中は、 たくさんいるからな。 おまえだってそうだったじゃないか。 体に爆弾抱えているのに、 無理言って劇団に入ったって、 おふくろさんから聞いたぜ」 「お母さんが、拓哉にそう言ったの?」 「あぁっ。劇団に入団したのは、 社会勉強のためだってこともな」 ひろみもかつては、 劇団に入るまでの道のりがあった。 彰も和彦も、いつかは通る 道のりを歩いていく。 ひろみとオレが通った道のりを、 彰にも、和彦にも、必ず歩いてほしいと オレは願っていた。
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