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――その日の夜。夕食と入浴を済ませたわたしはなかなか寝つけず,お城の中庭にある四阿の長椅子に座ってボーっとしていた。
この四阿には,ロマンチックな言い伝えがある。それは,わたしが尊敬してやまないあのリディア陛下にまつわること。だからだろうか。わたしがここで考えてしまうのは,もっぱら夕刻に出会ったあの不思議な男性のことばかり。
「"また会おう"って,どういうこと?」
誰に聞かれるでもなく,わたしはひとり呟く。アリサには宿舎のお部屋で話したけれど,「イライザ,気をつけた方がいいわよ」と険しい顔で言われた。
――「その男,あんたを誘惑しようとしてるのよ。罪人じゃないなら,女ったらしね,きっと」――
「そんなことない!」とは,はっきり言い返せなかった。だって,わたしはあの人のこと,まだほとんど何も知らないんだもの。
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