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「不躾で申し訳ないが,そなたの名前を聞かせてもらってもいいだろうか?」
ところが,わたしが彼の名前を訊ねる前に,わたしの方が名前を訊かれた。
「ああ,はい。イライザ……です。イライザ・バルディ。皇后アン様のお部屋係をさせて頂いています」
「歳は?」
「十七歳ですが。……あの,あなたのお名前は?あなたは一体,何者なんですか?」
わたしの問いに彼は答えず,わたしの側から立ち去ろうとする。
慌てて「待って!」と呼び止めると,彼は一瞬だけわたしを振り返り,これだけ答えてからまた行ってしまった。
「俺の名前はレオンだ。また会おう,イライザ」
「レオン……様?」
皇帝陛下とお名前が似ている気がするのは,わたしの考えすぎかしら?
あの方のお名前は,レオン様。なんだか不思議なお方だった。
それにしても,「また会おう」ってどういうことかしら?
わたしはその次の瞬間,ナタリア様のお使いを思い出して慌てふためいたのだった。
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