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私には弟が一人いる。
とても賢く、目に入れても痛くないほど可愛いのだ。
母上や父上よりも…ずっと愛している。
お前を苦しめる者は私が斬ってやろう。
お前を貶す者は私が切り刻んでやろう。
大丈夫、何も心配はいらない。
お前の兄を頼っておくれ。
「兄上、本当に行くのか?」
「あぁ…ふふ、大丈夫だよ。ちょっと狩りをしてくるだけさ。」
「だが、兄上は持病が…ッ」
「やめておくれ、弟よ。お前は母上や父上と同じことを言うのかい?」
「あ…すまない。俺はなんてことを…。」
酷く落ち込む弟の頭を撫でる。
いつの間にか私より大きくなっている、弟はその姿とは違い、甘えん坊だった。
「未圭、何をしているの?早く行きなさい。」
「…母上、申し訳ございません。すぐに行きます。」
「ッ…母上!」
「瑠加、貴方は跡継ぎの事だけを考えなさい。亡き前妻の兄よりも、ずっと良い。」
「っ…」
今の母上は、父上の2番目の妻だった。瑠加は腹違いだが、血は繋がっている。
私の母上は、病気で亡くなわれたと聞いたが…本当にそうなのだろうか?
「未圭、早く行きなさい。」
「はい…只今。」
母上は私を殺したいのだろう。前妻の子に愛情が湧くわけがない。
瑠加…お前は私ではなく、全てを見るんだ。
全てを手に入れられるお前を、私のせいでダメになるのは辛い。
そんな顔で見ないでおくれ、可愛い弟よ。
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