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「…さん、おねえさーん?」
耳元で声がして、目を開く。
お姉さん?誰がだ?
「あ、起きた〜?ねぇねぇ、可愛いね?お姉さん、奏の国の人かい?俺と旅しないかい?」
「…すまないが、私は男だ。初対面なのに口の利き方がなっていないな…。」
「え!?まじかよ…女かと思ったわ〜!睫毛長いし、顔綺麗だし…。勿体ないね…。」
金髪に赤い瞳をしたこの男は日の国の者か?ウザったらしいし、部屋に戻ろう。そろそろ瑠加を出さなければ。
「すまないが、どいてくれ。部屋に戻る。」
「ん?…良いけどさ、その箱ん中なに入ってんの?俺鼻が良いんだよね〜。」
その男は俺の腕を掴み、二人分座れる椅子に投げ飛ばした。幸い、ここには私たちしかいなく、騒ぎにはならかないが…不味いな。
「ッ…やめてくれ、なんのつもりだ。」
「ん〜?箱ん中見してくれないかなぁ、なんて?」
「無理だ。誰かも分からないお前に見せるほど、容易いものでは無い。」
「あっはぁ…ますます気になっちゃう。じゃあ、イタズラしちゃおうかな〜?お兄さんに。」
そう言いながらポケットからナイフを出してきた。ナイフを握りしめると、私の服を皮膚ごと裂いた。
「ッ…いたッ…!」
「顔は傷つけたくないけど…この白い肌はイイよね〜。お兄さん、そこらへんの女より肌綺麗だよ〜!」
「ッ…やめ…!」
腹を裂かれそうになった瞬間、箱から瑠加が出てきて、その男を蹴り上げた。
「ッッ…いったいなぁ…?やっぱりなんかいた…じゃ…ん。」
男は笑顔を消した。汗を垂らし、瑠加を見ている。そりゃ、そうだ…瑠加が男を糸で巻き付けたからな…。
「お前…兄上に何をした?大きな音と兄上のうめき声から目覚めたが…この男は兄上になにを…!」
「待て待て、私は大丈夫だ。瑠加、それより部屋にひとまず戻ろう。誰かに見つかる。」
「チッ…兄上の優しさに感謝しろ。」
で、この状況をどうしようか…。
「瑠加、一旦その男の口枷を外しておくれ。」
「…叫んだら殺すからな、男。」
「ッぷは…え?モノノ怪?…ヤバいじゃん…。」
落ち着きはあるのか、瑠加をジロジロ見る。瑠加はそんな男を睨みつけて血管を浮かせていた。…瑠加。
「瑠加、落ち着いて。治りは早いし大したことは無い。」
「へぇ…お兄さんもあれか、モノノ怪か。え、でも人間?」
「私は血を少し飲んだだけだ。それも弟のだが、少なからず人間より治りは早い。」
「兄上…!なぜ、軽々と話している?!」
瑠加が私の後ろから抱きつく。うーん…足がありすぎて苦しい…。
「えっと…名前はあるのかい?日の国の男よ。」
「あ?ああ…俺は真亜(シンア)。父は日の国だが、母は月の国出身だ。」
月の国は蓮の国よりも遠く、聞いたことはあるが、その国の住民にあった事は無い。噂によると、綺麗な赤色の瞳に銀髪だとか。
「で、お兄さんは…なんで船に?」
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