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「それにしても偶然だね」
「本当にすごい偶然」
「こんな日にこんな所で出会うなんて」
「とんだ物好きがいるもんだね」
「あなたもね」
どこからか鈴の音が、寒空の中を風に乗ってやってくる。リリリ、リン…。耳の中へ侵入してくる余韻が頭蓋骨に響き渡り、頭の中でわんわんと広がる。
北の国から運ばれる冷気は、風が生まれた場所である広大な大地を思わせる。ベーリング海峡を越えて渡ってきた、遥か彼方の旅路。それと、自分が普段生活している生活圏の半径とを比較するだけで、何だか敗けた気になる。
(……自分が今から起こそうとしていることは、何一つ意味なんてないんじゃないのか?)
疑問符が頭の上で浮かぶのを、ニット帽子の頭を横に振って否定した。
無駄なんかじゃない。絶対に意味があるはずだ、と拳に力をこめる。
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