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 そう思っていたのに、言えなくてずるずると時が過ぎていく。今までの態度がたたって話そうとすると、ついケンカ腰になってしまい告白なんて雰囲気に出来なかった。自由登校も始まって会う機会も減ってしまい、もう後一週間もすれば卒業式になってしまう。  意気地のない自分についため息が出た。今日も言えなかったと落ち込んで歩いていると、帰る途中であろうあいつの後ろ姿が見えた。周りを見ると他に人通りもなかった。もうチャンスはここしかない。「よし!」と気合を入れて話しかける。 「あんたも今帰りなの」 「あ?なんだ、お前か」  その言葉にいらっとして言い返そうとして、そうじゃないと思い返す。このままじゃいつものパターンだ。笑顔だ、とびっきりの笑顔でいい雰囲気にするんだ。 「今日は、いつもより早いんじゃない?」 「そうだけど。何、その顔気持ち悪い」  眉を顰めて言われた言葉に笑顔がひきつった。 「人の顔見て気持ち悪いはないんじゃない」 「見たことない変な顔してるからだろ。それとも、なんか企んでんの?」  告白しようとしているから、企んでいるとはいえる。考えを見透かされているような気がして、何を話していいかわからなくなった。なんとか話そうとするけれど「その」とか「えっと」とかの先の言葉が続かない。そんな私を見てあいつが苛立ったように 「言いたいことがあるんだったら、はっきり言えよ」   と言ってきた。その言葉に、プツンと切れて思わず 「あんたのことが好きなんだよ!」  勢いでいってしまっていた。ちゃんと今までの気持ちを言うつもりだったのに。あいつの顔を見れなくて下を向いてしまう。 「参ったよ」  その言葉に思わず顔を上げると、あいつは口をへの字にしてふくれっ面をしていた。そんな顔をされるくらい嫌だったのだろうか。可愛くないことをやってしまっていたが、嫌われてはいないと思っていたのに。 「何よ。そんなに嫌だったの」 「そうじゃない。俺から言うつもりだった」 「何を」  あいつは緊張した面持ちで、まっすぐこちらを見つめ 「俺も好きだ」 「うそ」 「こんな嘘ついてどうすんだよ」  お互い真っ赤になってその場に佇んでいた。  恥ずかしさを誤魔化すために 「好きなら、なんで変な顔っていったのよ。ひどいじゃない」  と言ったが、あいつは返事を返さずに私の手を取り歩き出した。びっくりしてそのまま何も言えないで歩いていると、急に立ち止まった。周りを見るともう私の家の前だった。  あいつは、私の手を一度ぎゅっと握り呟くような声で 「無理して作ったような顔だった。……普通にしてりゃ可愛いんだからそのままでいろよ」    そう言って、ぱっと手を放すと走って家に入ってしまった。 「~っ」  思わずしゃがみこんで、顔を覆ってしまった。きっと顔だけじゃなく耳まで真っ赤だろう。
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