もう離れないで

12/16
前へ
/16ページ
次へ
怜はコップを受け取ってサイドテーブルに置くと、私の肩を押してゆっくりとベッドに押し倒した。 上にまたがってきたので下から彼を見上げる形になる。彼の顔が近づいてきたので目を閉じると、額にそっと唇が触れるのを感じた。 それからこめかみ、目のふち、頬、首筋へとその唇が降りていった。 ゆっくりと、細かく、私の体のあちこちに怜の唇がキスを落としていく。 「怜……?」 私はもう満たされたのに、どうしてこんなに時間をかけているんだろう? 私のそんな疑問を読み取ったのか、怜が微笑した。 「ここに理佐がいるって、本物がいるって、確かめているんだよ」 「本物?」 「ん。ずっと妄想を抱いてきたから」 「ちょっと、私の妄想に何してたの」 「本物を見たら忘れた」 「なにそれ」 怜が妄想の話をするのはこれが初めてじゃない。でも、これを最後にしたい。 笑いながらも手を伸ばして怜の頬に触れる。 「これからはずっと一緒だから。もう妄想はなしね?」 怜は一瞬目を見開くと、「ああ、そうだな」 と答えた。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

65人が本棚に入れています
本棚に追加