もう離れないで

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「ちょっとダメ、悪戯しないで」 きょう一日ものすごくいろいろなことがあって、ようやく私の住むマンションにたどり着いた私たち。 やっと二人きりになれる……のだけれど、どうやらドアを開けるそのわずかな時間すら待てない人が背後にいるらしい。 ロックを開錠してる間にもうなじに怜の唇を感じる。気が散って鍵あけられないよ! 「悪戯じゃないよ」 背後に立つ怜の声には微かに笑いが含まれているように聞こえた。 まったくもう。 ようやく中に入るとコートを脱ぐ間もなくドアに押し付けられた。 ああ、前にもこんなことがあったな……。あれはパリだっけ、東京だっけ。いや両方だ。 そんなことを頭の隅で冷静に思い出している自分が可笑しい。 「ちょっと、怜、靴、脱がないと」 靴なのだろうか。怜が足を振った後何かが転がる音がした。 「脱いだ」 いやだからそういう意味じゃなくて! 私まだ履いてるし!
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