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「それって、ついに古賀君に告られた感じじゃない?」
理沙は、一口ちょうだい、と私のヨーグルトにスプーンを入れながら言った。
理沙は友達の中の、特に気の合う友達だった。友達は多いほうがいい。大学生活が楽しくなる。でも、特に気の合う友達はそんなにはいない。良い私もダメな私も、どちらも受け入れてくれる友人は、一人でもいればラッキーなのかもしれない。
「告られたって、いきなり?」
「いきなり、って思ってるんだ、千菜は。もう少し、男心をわかってあげてもいいんじゃない?」
理沙は帰国子女なので、同学年でも年は一つ上になる。姉御肌の、頼れる親友。
「いきなりじゃないと思うけど?私が見ている限り。ついに、って言ったでしょ」
「でも、好きとか言われたわけじゃないし」
理沙は帰国子女らしく、肩をすくめて御手上げのポーズをする。
「千菜の反応で、それ以上言えなかったんでしょ。かわいそ、古賀君。ま、押せない古賀君も古賀君だけど」
…押す、って。
「やっぱり、”先生”なんだ」
もちろん、理沙は、先生の存在を知っている。先週のハプニングの事も。
「そんなんじゃないよ…。先生は、友達だし」
古賀君も先生も、友達として同列な筈。
ただ、この一週間は、断然先生の存在感が大きかったのは確かだけれど…。
「友達ねぇ…。今どき中学生だって健全なお友達でいられるかわからないのに。古賀君は倍率高いんだから、もったいない。先生とどっちがイケメン?」
イケメン、て。そんなのは重要じゃない。
確かに、先生は素敵だけれど、見た目じゃないのに。
「まあ、どっちにしろ自分の気持ちをしっかり見極めないと。モテ期、到来だね」
理沙は楽しそうにそう言うと、もう一口、と言ってヨーグルトを奪取した。
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