424人が本棚に入れています
本棚に追加
/142ページ
「須藤、そっち持てる?」
大学の教室から、教授に頼まれた荷物を、古賀君と運ぶことになった。偶然、教室で席が近くなることが多く、今日も”そこの2人で運んで”と、ご指名があった。
「大丈夫、持てる。なんかまた使われちゃったね、教授に」
今日は金曜日。先生との約束の日。お昼が終わったら、早めに病院に行きたかった。
「俺はラッキーだったけど」
「古賀君、また教授の心証良くなるよね。なにかと指名率高くない?」
「…そっち?須藤、相変わらずだな」
少しあきれたトーンで言われる。古賀君は、足を止めると私を見下ろした。
「俺が、2人でいつでも手伝いますよ、って言ってるの、教授に。で、わざわざ須藤の傍に座ってるの。それって、どう思う?」
数秒考える。
「私の心証も、良くしてくれている」
古賀君は、肩で大げさにため息をついた。
「つまんない答え。ハズレ。進歩ないな、お前は」
古賀君は、私の倍ほど荷物を起用に持ちながら、視線をよこした。
「今日、どっか行くの」
「…なんで?」
今日はまた、普段気ないようなブラウスを着ていた。もし、先生と一緒にいても子供っぽくならないように。
「なんか、いつもと雰囲気違うから。金曜日、なんかあるの?先週もそんな感じだったろ」
「…なに、チェックしてるの」
笑ってごまかそうと、見上げた私の顔の数センチ先に、古賀君の端正な顔が近づく。今年ブレイクしたと評判の俳優に似た、綺麗な切れ長の瞳が、少し心配そうに揺らいだ。
…え?
気の合う男友達の一人の筈、古賀君は。
数人のグループで、食事に行ったり勉強したり。
古賀君は、その後は何も言わずに荷物を持ち直すと、また歩き始めた。
…気の合う友達の筈、古賀君は。
最初のコメントを投稿しよう!