月が輝く瑠璃色の空

ニアミス

　汗をしっかり流すためにシャワーを長めに浴びたせいで、ギリギリの時間になってしまった。いつもは、朝ご飯をそこそこ準備して食べるけれど、今日は無理そうだった。どうもまだ衝撃を引きずっているのか、いつものリズムになれない。
　髪も半乾きのまま、アパートを出た。

　急げば、コンビニでサンドイッチくらい買えるかも。そう考えて、先を急ぐ。

　朝の街は、ちょうど通勤・通学の人たちで忙しそうに流れている。私もその流れに逆らわずに、少し先のコンビニを目指した。
　今日も、汗ばむような空気になりつつある。実家ではまだ春が残る5月も、東京は夏の入り口なのかもしれない。

　急ぎ足の人達は、あまり周りを気にせずに歩いていた。そんな大人に混ざって、少し前をおしゃべりしながら歩いていた小学生の1人がパタリと転んだ。膝を擦りむいたらしい。
　思わず駆け寄って、一生懸命泣くのを我慢しているその子に声をかけ、持っていた絆創膏を貼ってあげた。その子は、涙が流れそうなのを堪(こら)えてきちんとお礼を言うと、友達と歩き始める。

　しっかり歩けてる。よかった。

　ほっとして、ランドセルの後ろ姿を見送っていると、こちらを振り返ってぺこりとお辞儀をした。
　私は嬉しくなって、手を振って返した。

　朝ご飯はお預けになりそうだけれど、朝イチのあの衝撃を撃退できた気分になって、振り返ってくれた小学生に、こちらこそ、と心の中で呟いた。