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二十年ほど前に結婚した私達は
当時、足利市に住んでいた。
その頃の私は、
東京の営業部から地方の支社へ
移動になったことに
少なからぬ不満をもっていて
不機嫌になることがしばしばだった。
妻はそれを詰るでもなく、
むしろ何処吹く風で
「今日は七福神参りしてきたよ♪」
「桐生の美術館へ行ってきた」
と、地方暮らしを一人で満喫・・・
いや、満喫どころか・・・
心細い気持ちをもて余し、
見知らぬ町を、独り
歩いていたのだろう・・・。
ある朝、
「あ～～～もうその不機嫌顔！
う～～～～～んざり！！！」
テーブルを両手で叩いて
「会社なんか辞めちゃえ！」
大声で怒鳴った。
呆気にとられた。
妻は怒鳴ったりするような質ではない。
よほど腹に据えかねていたと
反省するものの、
女性の機嫌を巧くとる・・・
そんな質でもないのが私だ。
一時間ほど無言が続いたあと、
「ドライブでも行こうか・・・」
妻はカバンを持って立ち上がった。
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