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遺体のない通夜の席、
君は白の喪服で座っていた。
ー夫に殉ずるー
その証のままに
凛と背筋をのばして座る君のそばに
乳呑み子の邦子と、
がっくり肩を落とした僕の両親・・・。
葬儀が済んで弔問客が帰るまで
涙一つ溢さずにいた君が
深夜の大山参道で
泣きながら呟いた・・・。
「待ってるよ、邦彦さん
ずっと待ってる・・・邦彦さん」
貴子・・・貴子・・・
君を抱けぬ悔しさを、
魂だけ戻った僕の慟哭を、
いったい誰が
解ってくれると言うのだろうか・・・。
そして、
これから君がする苦労を思うと
歯痒くて、情けなくて
たまらなかった・・・。
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