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愛はまだ
新しい恋をはじめてみよう
冬の終わりを告げる風の声が聴こえたら
それを合図にしてこころが支度をはじめる
春を感じてこころが芽吹いたら
あとはだまって花が咲くのを待てばいい
それが散ってしまえばただの恋
それが実を付ければそれは愛
いつか咲いた花はいつまでたっても実を付けず
待ちくたびれていたらある日はかなく散ってしまった
愛の形になる前に
花を散らす冷たい風に身を竦め
ゆくてに広がる雨まじりの消沈した空は
こころを映すカガミのよう
されど恋はきまぐれにこころを惑わす
いずれまた悪戯のように風に乗せて運んで来てしまう
いくつもの偶然のタネを
そしてときめきを感じてこころが芽吹き
花が開き
いつかそれが実を付ければそれが愛
なのにそれは散ってばかり
愛の形になる前に
愛はまだ此処にはいない
愛はまだ此処には誕生していない
風がまた泣いているよ
季節が変わることを惜しむように
恋にやぶれた女がすすり泣くみたいに
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