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中の見えないすりガラスの入ったドアを閉めると
宮城は椅子に腰掛けうなだれながら瀬良に話しかけた
「で、いったい何の用ですか?」
そう言いながら視線が上がると必然的に目が合う
瀬良はその瞳に吸い込まれる感覚に酔い立ったまま動けずにいた
「っい、いえ…あの…」
舌がもつれてうまく話せない
昨晩のことがちらついて本題が出てこなかった
「業務のことで何かミスがございましたか?」
あくまでも低姿勢な宮城に、瀬良は業務部に来た本来の理由を思い出した
納品書を宮城の手元に差し出すと
ここなんですが、と太い罫線で縁取られた受注欄を指差した
「あ、あの…受注の量と商品が間違っていたようです」
業務部に来る前の威勢はもうどこかに消え失せている
宮城は納品書を受け取るとスッと立ち上がり瀬良に頭を下げていた
「申し訳ありませんでした。今後はこのようなミスはないようにします」
そう言ったと同時に宮城は、では失礼しますと言って瀬良に背を向けていた
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