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出会いなんてものじゃない
「……はぁ」
月も沈みそうな深夜
春から夏になりかけるこの時期、
海から離れたこの区画はじわじわと夏の気候に向かっている
瀬良は仕立てのいい深い紺のジャケットを腕に持ち、えんじのネクタイを緩めながら重いため息を落とした
とぼとぼと歩いて人気もなく、暗く沈んだ公園に着くと
ベンチに腰掛け、もう1つ小さくため息をついた。
((大変申し訳ありませんでした!!))
今日の昼過ぎの自分の謝罪を思い出してはまたさらに自己嫌悪に陥る
なんであんなことになったんだろう…おれがあんなミスするなんて……
取引先だけでなく、上司にも迷惑をかけてしまったし、この企画が失敗すれば開発部にだって迷惑がかかってしまう。
「あぁ…俺……クビかなぁ…」
クビになったらどうしようかな
実家には怖くて帰れないなぁ
お父さんとか特にさ、クビになったとか言ったら殺してきそうだもん
本当、なんでこんなことになったんだよ…
…………ん?
いや、元はと言えば業務部の奴が受注ミスしたのが発端じゃない?
業務部が受注ミスなんてしなければ取引先に注文と違う商品が大量に届くなんてことはなかったし、商品を動かそうとした取引先の社長がぎっくり腰になることも、運送費がバカ高くかかって経理部のお局さんに大目玉を喰らうこともなかったじゃないか!
瀬良は顔も知らない業務部の担当者にむかむかと腹を立てた
ぁああぁああ!!そう考えるとなんかムカついてきた!
「フフフ……待ってろよ…業務部のやつ!ちゃんと俺がお前のミスを指摘してやる…」
手を固く組み誓いを立てるように呟くと、なんだか落ち着いてきた
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