望まれない再会

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望まれない再会

衝撃的な夜を終えた瀬良はいつものように出社していた 飲料メーカーであるこの会社で瀬良は営業を担っている 自社自慢の商品をたずさえ取引先と商談し、売る。 それがなんともやりがいがあり、また、自分の天職だと思う 取引先の資料や商品の資料などがきちんと整理整頓されたデスクに座り 瀬良は朝の日課であるメールチェックを行い始める いつものように午前の業務や会議を終え 昼休憩に差し掛かった頃、誰かが瀬良の方を叩いた 「昨日は大変だったなー大丈夫か?」 声の方に首を傾けると若干ニヤニヤしながら話しかける秋葉がいた どんだけニヤニヤされようと腹が立たないのは秋葉の特性だろう 短髪の髪にキラキラした笑顔が特徴的な秋葉は誰にでも好かれる そんな秋葉とは高校生からの仲だ 瀬良がありがとうと呟くとさらに秋葉は続けた 「いやーでも経理のオニババに怒鳴られたのは痛かったなー」 オニババというのは経理部のお局のことだ 「それ、大きな声で言うと誰がどこで聞いてるかわからないぞお前…」 焦って耳打ちすると秋葉にまあまあとたしなめられる 「でもあれって元はと言えば業務部の人が受注ミスしたからじゃないの?」 「…あっ」 そうだった昨夜のことが衝撃的すぎてすっかり忘れてた。 思いだすとまた怒りがジリジリと噴き上がってきた 「あっ、てお前なあ…ちゃんと言っとかないとまたミスられるぞ」 「そうだよな…言いに行ってくるわ!」 瀬良はそう言って力強く立ち上がると昼ごはんなんてそっちのけで業務部へと向かっていく。 手元には昨日の受注ミスの証拠である納品書があった。 瀬良は納品書に目を落とすと受注担当者の欄を探す 「宮城…智春か……」
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