―海とトナカイとサンタと―

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「やっぱり、海は見てる方が良いなぁ」 「泳げねぇの?」 「今みたいに溺れたんだよね。昔」  「情けないなぁ」と言いながらも楽しそうに笑う男に、清和は一つ息を吐く。 「濡れたトナカイそのままにしていたら、動物愛護団体からバッシングされそうだな。あんた、ここらの人じゃないよね。泊まってる所は?」 「兄の家に御厄介になろうかと思って」 「お兄さん?」 「あぁ! 居たっ! 東姉っ、兄貴居たっ」  お兄さんの名前を聞き出す前に、清真に見つかってしまった。 「やっべ」  近づいて来た東琉と清真の他に、もう二人。勿論、海美と、漁を終えて掃除を手伝いに来た淩次だ。 「総出でお迎えかよ」  ボソリと苦い顔で呟くと、隣からは嬉しそうな声がする。 「兄さん、東琉さん」  東琉はザッザカ歩いて来ると、二人の目の前で仁王立ちになった。 「お迎えに来てやったわよ清和。何やってんのって聞きたい所なんだけど、サンタじゃんっ! 何やってんの、アンタ」  清和に向けられるはずだった、東琉の「何やってんの」は、隣の男に向けられた。 「淩ちゃんっ! サンタが居るっ」  男は〝トナカイ〟ではなくて、〝サンタ〟だったらしい。 (あぁそれで、爺さんでも人間が良いか)  先に着いていた東琉と清真を、追い掛けて来ていた淩次と海美も合流した。 「は? サンタロウ?」  〝サンタ〟でもなくて〝サンタロウ〟?  どれが、この男の名前なんだ。 「兄貴、ずぶ濡れじゃん」  二人掛かりで問い詰められている男の横で、清真が自分の状態に気付き、驚いた言葉を向けてくると、東琉と淩次は納得したらしい。 「サンタロウが海に落ちたのを、清和が助けてくれたんだろ。悪かったな」  グシャグシャと濡れた頭を撫でられた。かと思うと、ベシッと、思いっきり頭を平手打ちされた。 「っってぇ!」 「青家の掃除をサボった罰だろ。サンタロウを助けてくれたから、拳じゃなく平手な。俺って優しい」  殴られた頭を抱えていると、今度は後ろから、優しく撫でられる。 「自分で言ってる時点で、どうかと思うよ兄さん」 「うるせぇよ。つーか、お前は何でここに居るんだよ。連絡くらい寄越してから来いよ。迷惑な自由人め」  清和を挟んで、長身の二人が自分の頭越しに言い合っている。 「あはは、言われると思ったんだけどさぁ、今日、思い付いちゃったんだよね」 (でけぇ兄弟だな。俺だって、そんなに低くないはずなんだけどな)  二人の会話で、清和は大体の事を把握しながら、長身の二人を眺め見遣る。
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