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「悪しき夢を見たわ」
十二色の唐衣を散りばめ、かぐや姫は仰向けに横たわり微睡んでいた。
かぐや姫は、遠い昔日の忘れがたい夢を見たかのように魘され、鳴り響く雷鳴の音で目を覚ました。眼を開けると、黒く広がった稲光を伴う暗雲から幾重にも透き通った雨粒が落ちてくるのが見えた。
かぐや姫の鼻に、どこから飛んできたのか蜻蛉が停まった。
「この虫。妾に停まれるとは、面白き虫よのう」
ふっとほほ笑むと、すっと我に返った。
「ここはいずこなり!」
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