1 十五夜

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1 十五夜

『 嗚呼 綺麗 きれいだわ! 』  羽衣を纏ったかぐや姫は、京の街で熾火の如く燃え狂う燎原の炎を見下ろし呟いた。 b554cac5-e494-4bd8-9ac8-10b3e9d400a4  逢魔(おうま)が刻、かぐや姫は玄兎(げんと)操る船で月に帰らねばならなかった。 それを阻止しようと国司と兵は燃える火矢を放つ。  玄兎は熾火(おきび)で焼けた鬼灯を兵にばら撒いた。 鬼灯は立ちどころに飛び火となり、あたり一面(ことごと)く焼けただれ、炎は渦を巻き十五夜を紅蓮色に染め舞い上がった。  全ては泡沫(うたかた)の夢、かぐや姫は玄兎に(いざなわ)れ月虹綾なす天満月の静寂(しじま)へ消えていった。
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