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妹/紫苑/あかつき草子…4
「ねえ、お兄ちゃん本当に大丈夫? 」
ヘルメットが脱げないって、顔が大き過ぎ?
「大丈夫、大丈夫」
くぐもった声だけど、しょうがないか。心配させないためなんだろうけど、大きく首を縦に振ったり、横に振ったりする。それがまるで、戦隊モノのヒーローみたいに見える。悪いけど、笑ってしまう。
「さ、行くぞ!」
そうそう、福士蒼汰くん!
「うん!」
お兄ちゃんは、私の手をつかんで、エレベーターに乗ろうとした。待ってる人たちは、一瞬、ギョッとした顔をしたけれど、どうやらみんな、心は福士くんにあるみたい。
「遅いな」
お兄ちゃんは、私を引っ張って、階段の方へ行く。
「足元、危ないよ」
持ち前の運動神経の良さで、こんなことは何でもないのね。タタタと下りていく。
でも、下りたところでお兄ちゃんは止められた。
「ちょっと、君きみ! ヘルメット取って!」 「あ、これ、脱げないんです」
「そんなこと、あるか」
え! もしかして、不審者だと思われてる?
「紫苑、俺のことはいいから、先に行け」
「う、うん」
お兄ちゃんのことだから、後から来るよね。私はその先へと走る。
「あ! 君、その向こうは……」
何だか後ろで言ってるみたいだったけど、早くしないと撮影が終わっちゃう。私は構わず、衝立の脇を通って、前に出る。
え? ライトがまぶしい!
そこにいるのは、蒼汰くん?!
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