兄/量一/S.S…5

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兄/量一/S.S…5

「ちょっと、君きみ! ヘルメット取って!」 階段を降りたところで制服に捕まった。 「あ、これ、脱げないんです」 「そんなこと、あるか」 強い口調で問答無用の二の句を告げられた。 参ったな。 「そんなこと」があるからこの格好なんだけどな。 まぁ、時間を惜しんであんたたちに見つかる前に脱げることに賭けた行動だったんだけど。 制服が近づいてくる。 あー、ダメだ。焼け付くような眼光してるし。 まぁ、そらそうだ。 わかる。わかるよ。 俺が悪いよ。あんたの言いたい事は百も承知だよ。不審者に見えるよな。 でも、そんなに強い選民意識で職務遂行しようとする過剰な責任感はどこからくるんだ? 民主主義社会だぞ? 日本だろ? デリカシーが無いのか? いきなり犯罪者扱いで接っするなんて? こういうある種頭のネジが抜けた痛い奴は…… 経験が囁く。 『誤解を解かないと、面倒臭い事になるぞ』 時間にして0.5秒。 瞬間考察して、諦めた。 振り返る。 紫苑は驚きに、悪戯が見つかった時のようなバツの悪い表情が混じっていた。 ーー紫苑に悪い思いはさせたく無い。 ーー撮影を見せてあげたい。 ツキがないけど、俺も悪いなーー。 「紫苑、俺のことはいいから、先に行け」 手のひらを挙げて、心配しないようにおどけて笑いかけた。
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