兄/量一/S.S…6

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兄/量一/S.S…6

「そこに座って」 白いプラスチックプレートに警備員室と書かれたドアを開けると、中にはパソコンと格闘している同じ制服が数人いた。 何十台とある液晶画面が防犯カメラの映像を映し出していて、数秒ごとに画像が切り替わっている。 「まずはいい加減そのヘルメットを早く脱いで」 机を挟んだ椅子に座らされて、“ヘルメットをどうしても取らない男”と判断された俺の取調べが始まった。 「あの、本当に脱げないんです……」 時間が惜しかったので免許を机に滑らせて言う。 すると、数秒の沈黙の後。 「きみ。ご家族は?」 「家族は関係ないでしょう?」 「家族に迷惑をかけたくなかったら、さっさと脱いだらどうなんだ?」 胸に『今井』と書かれた制服が、困ったやつだ、と言わんばかりに片眉を上げて諭してきた。 ーー勘違いもいいとこだ! 目の前の警備員『今井』は俺が“どうしても顔を見せられない、疚しい男”として映っているのだ。 「そうじゃないんです! 脱ぎたくても、脱げないんですよ。頭から取れないんです! 俺も困っているんです。わかってくださいよ!」 両手でメットを掴み、半ば叫びながら脱げないとアピールした。 その時だった。 目の前の液晶に映るパーカーを着た1人の女性が目に入った。 紫苑? 紫苑だ! 座って何かを食べている。 何処だ? すると画面手前からこちらに背を向けた大男が紫苑に近づいていく。 何かを話しかけられた紫苑がとても動揺しているのは画面越しからでも直ぐにわかった。 あれ? 紫苑の前に大男が座った? 直後、 紫苑が身をのけぞらせるーー。 ーー紫苑が嫌がっている!? そこで画面が切り変わった。 「あー、本当に取れないのか。そのヘルメットは……」 今井の言葉が終わらないうちに俺は椅子を蹴っていた。 「免許を置いていくから、いいだろ!」 言い捨てドアを開け放つ。 バックヤードを走る俺の背に「お客さんちょっと待って〜!」と今井の声が響いた。
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