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妹/紫苑/あかつき草子…7
向こうからフルフェイスマンが現れた時、お客さんの人垣が、サーッと左右に分かれた。
「キャー」って声も聞こえた。
「お兄ちゃん?」
すると予想通り、声が聞こえた。
「紫苑?」
今の今まで、脱げていなかったんだ。 そう思ったら、お兄ちゃんが頭を上げた途端、すぽっと脱げた。
「え? 違うの?」
「蒼汰君だと思ったのに」
ああ、そうか。 周りの人達は、蒼汰くんが現れたと思ったんだ。
「紫苑! 大丈夫か? ひどいことされてないか?」
お兄ちゃんは真剣な顔で、それもかなり大きな声で言う。
「お……お兄ちゃん?」
ざわついてたお客さんたちが、一気に静まる。
あー、今度はいきなりお芝居が始まったと思われたんだ。
「お兄ちゃん、私は大丈夫だから」
「そうか。それなら、さっさと行くぞ」
え? 行きたくない。
「行かない」
あれ? 何で?
自分で自分にびっくりした。
「どうした? ああ、蒼汰くんがいないな。まだ出てきてないのか」
うーんと、それもそうなんだけど、もっと重大な理由ができたんだよね。
「あのね、私、やることがあるの」
「やること?」
そこに、チーズドックが5つ、運ばれてきた。
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