妹/紫苑/あかつき草子…8

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妹/紫苑/あかつき草子…8

「お兄ちゃん。私ね、これを食べたい……、あ、食べなきゃいけないの」 お兄ちゃんは、わけがわからないって顔してる。 あんまり、心配しないで。 いいのいいの。まあ、見てて。 それより、これこれ! うーん! チーズのいい匂い。さっきのよりでき立てだから、温かくてふんわりしてる。 もお、見ただけで、うれしくなるわ。 知らず知らずのうちに、笑いがこみあげてくる。 では、さっそくちょうだいします。 「いっただっきまーす」 がぶりといただく。うん、やっぱりおいしい! 3口ぐらいで、1本をぺろりとたいらげる。 あん。 あったかい方がおいしいわ。 こんなに一度に持ってこられたら困るわ。 おいしいうちに食べないと、チーズドックに失礼よね。 私はびよーんとチーズを伸ばしながらも、それを器用に舌で巻き取り、またもぺろりといただく。 4本目も食べ、5本目にパクッとかぶりつく。 ああ、食べるって、幸せー。 ほっぺた、おちるー。 何だか激しく視線を感じて、上目づかいで見てみた。 周りの人たちがみんな、目を丸くして、私を見ている。 え? 何でそんな顔で見るのかしら? 「これ、ほんとにおいしいです!」 私は、にっこり笑う。 すると、みんなもとろりと溶けるような笑顔になった。
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