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兄/量一/青史 炎…12
俺は6歳のクリスマスに両親を亡くした。
旅行先の冬山で雪崩が起きたのだ。
夜明けの晩に、宿泊先のペンションを含めた周囲一帯が数百メートルにも及んで麓に流された。
「生存者がいたぞ! 幼児だ! 早く担架持ってきてくれ!」
現実なのか。夢なのか。
「ゆっくり。ゆっくり動かして! 気道を確保するんだ!」
事故当時のことはあまり思い出せない。
気がつくと大人の背中で運ばれながら、ぼんやりとした定まらない焦点で辺りを見ていた。
暗闇に無数の蛍が宙を舞っているような、あまたの光点が糸をひいては流れる映像だった。
ーーああ。そうか。これは星空なんだ。
満天の星を眺めていたのを覚えている。
その後、身寄りのない俺は9歳まで児童養護施設で育った。ようやく施設に馴染み始めた頃、俺を養子として引き取り、家族に向かえ入れてくれたのが今の義父だ。
「量一くん。私たちの家でご飯を食べないかい?」
義父は俺に優しく語りかけてくれた。
新しい家族。新しい家。新しい土地。周りは願ってもない話だと、はやした。でも、それは俺にとって不安と恐怖の対象でしかなかった。
神様の気まぐれで、与えられた命で、与えられる家族。
俺はこれからどうなるのだろう。
俺は一体どこに流れていくのだろう。
養子縁組が決まってからは心細さに拍車がかかった。ご飯などはろくに喉を通らなかった。だから、新しい家に着くなり俺はたまらなって逃げ出した。
行くあてもなく駆け込んだくたびれた駄菓子屋で紫苑に出会った。
「これね、美味しいの」
夕日を反射してキラキラと輝く鼈甲飴は、あまたの光点が糸をひき、どこまでも荒んだ駄菓子屋で、幻想的に輝く。照らす。織り成し、目を射る。
ーーああ、あの時の星空みたいだ。
なめると、自分が酷く腹が減っていることに気がついた。
飴は、甘くて、優しかった。
何かが自分の中でうまる。理屈じゃなかった。
途中からは涙で少しだけ、しょっぱかったのを覚えてる。
紫苑は同じ養子として迎えられた子で、俺の妹だと後に知った。
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