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光が導き出した出会い
今日は、残業をする羽目になってしまった。
時間は、22時を指している。
暗闇が苦手な私は、残りの仕事を明日に持ち越し帰ることにした。
会社から家までは、電車で1時間。
最寄駅に着く頃には、23時を回り、辺りは真っ暗だった。
この時間から料理を作るのが面倒になり、コンビニで適当に軽食を購入した。
暗い夜道を歩いていると、一点の光が見えた。
光の方に近づいて見ると。
そこには、白いスーツ姿の男性がうずくまっている。
怖いが、声をかけることにした。
「大丈夫ですか?どこか具合でも悪いんですか?」
光の正体は、ゴールドに輝く男性の髪の毛の色だった。
しかし、返答がない。
「あの……。」
すると突然男性が振り向いた。その顔に心を奪われた。
「あっ。」
一番好きな少女漫画の主人公の王子様に、その男性は似ていた。
くっきり二重な目、長いまつ毛、整った鼻。
全てが完璧な配置で整えられている顔から目が離せなかった。
見惚れていると、男性がやっと言葉を発した。
「大丈夫です。すみません、少し寒くてうずくまっていただけでしたので、お気になさらず。ご親切にありがとうございます。」
男性の服装を見ると、真冬だというのに、コート愚かジャケットを羽織るだけの薄着じゃないか。
「あの。うちすぐそこなんですが、温まりに来ますか?この寒空でずっとこうしているのも体に悪いですし……。」
言った後に気づいた、何をバカなことを言っているのかと。
今、初めて会った、しかもまだ名前も知らない男性を自ら家に誘うなんて。
絶対に変な人だって思われたに違いない。
「あ、すみません。変な事を言ってしまって。でも、このまま見過ごすのも、人としてどうなのかなとか、いろいろ考えたら、頭で整理するより言葉が先に突っ走ってしまいました。すみません、変な事を言って。」
すると男性は、立ち上がり、笑った。
「可笑しな人ですね。普通、こんな夜中に、寒いからうずくまっていた、なんて言う人がいたら、放っておきますよ。だって、怖いじゃないですか。きっと、あなたは優しい人なんですね。」
男性の笑った顔が、私の心の深い所を擽る。
「あ、名前言っていなかったですね。僕は、せいやと言います。星の夜と書いてせいや。」
「まさに、今この状態みたいな名前ですね。だってほら、星が綺麗な夜ですもん!」
夜空を見上げると、私たちを照らしてくれているかのように星たちがキラキラ輝き照らしている。
余りにもこの状況にぴったりな名前だったため、自分の自己紹介をするのを忘れていた。
「私は、綾と言います。」
綾さん、と男性から名前を呼ばれ慣れていないせいか妙に恥ずかしかった。
星夜さんは、私をジッと見ているのに気づいた。
「綾さん、本当に家にお邪魔してもいいんですか?」
悪い人ではなさそうだから、「いいですよ。」と返事をした。
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