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5 好きという名のこだわりを
-5- 藍染
あれから毎日のようにクーさんを誘ってゲームをして、二ヶ月経った。
VCを繋いでくれてからひと月後。ようやく、本当にようやく八重垣は彼女にフレンドを飛ばした。
新しいゲームでチュートリアルを終わらせた段階でフレンドをいつものように飛ばし、その時にクーさんともフレンドになった。そして、「そういえばいつものゲームではフレンドをまだしていなかったね」となったわけだ。
VCでそんな事を言う八重垣のわざとらしさに笑いそうになった。
クーさんはそれに対しいつも八重垣ではなく俺から誘われているから気にしてなかったという。
かくして八重垣はどうにか一歩進んだわけだ。
外部VCだって既に繋いでいるのに、きっかけとなったゲームが最終ラインとして残っていたのは面白い。
ラインを超えてしまってからは肩の荷が下りたかのように八重垣は彼女に優しくなった。
優しいというのも違うかな。
積極的になった?
クーさんが不透明な頃は俺に対し「あいつお菓子ばっか食ってるから太るんだ」とか言ってたのに、今では美味しいと噂のお菓子を自分で食べて勧めたり、書かれていたアイドルの話題を気にしたりと彼女が好きなものを拾おうとしている。
チームを組むのだって俺より早くやるし、ログアウトの時に毎度丁寧に「おやすみ」と声をかける。
友人のそんな様は面白くて、笑えて、ちょっとむず痒くて、なんだか嬉しかった。
「こいつ良いやつなんだよ。オススメだよ」って言う代わりに、ソロで違うゲームをやる時間を増やした。
昔やっていた今は過疎のMMOを再びやって、一切並び立っていない過去のプレイヤー露店跡地に諸行無常を感じたり、70%オフでワンコイン以下になっている横スクシューティングで向いてなさを再確認したり。
一切八重垣たちとやっていないわけではない。ただ三人の時間を減らして二人が――八重垣がなるべく話せるようにと思っているだけ。
たまに八重垣が遅れる時、クーさんにこっそりどのくらい仲良くなったのか進展を窺ったりもした。
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