光なんてなければいいのに

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「え〜、いきなりだなぁ。鍾乳洞の暗闇の中で、恋バナ(こいばな)って。ホテルで寝る前のトークじゃないんだから。……ていうか、竹井さんも、やっぱりそういう話題好きなんだ?」 「うん。私だって女子なんだよ? 興味はあるし、それに、美奈は親友だしね。ちゃんと、大切にしてもらえているのかな〜って。ちょっと気になって」 「そっか。そうだよね。……うん。順調だよ。ご心配いただきありがとうございます」 「……別に心配ってわけじゃないけど。ま、順調ならよろしい」 「ははは。ありがとうございます」  おどけたように、頭を一つ下げる一上くん。 「竹井さんは、美奈と本当に仲が良いよね?」 「うん、親友だからね〜」 「親友かぁ。女の子同士の友情って、……なんだか良いよね」 「そう? そうかな? だから、美奈のこと泣かせたりしたら、私が承知しないんだからね。一上くん」 「肝に銘じておきます」  神妙な顔でそう言うと、一上くんは可笑しそうに笑った。  私も笑った。  演技みたいに冗談めかした会話。そこに潜ませた和やかさ自体が演技なのに。  一上くんはそれに気付かない。  ううん、気付かないでいてくれて良いのだ。  私は、そんな狡賢くて、悪い女になりたい訳じゃない。 「きゃっ!」  その時、小さな岩に躓いて、突然、私は体勢を崩す。  一上くんが、倒れそうになった私を、間一髪のところで支えた。 「竹井さん、大丈夫っ?」 「……う、うん」  暗がりの中、私の額は一上くんの胸に収まっている。  思わずしがみついた両手は彼の背中。私を支える一上くんの腕は私の後ろに回っていた。彼の手のひらが背中に触れ、もう一つの手のひらはお尻の少し上あたりの腰に触れている。  ――まるで恋人が抱き合うような格好。
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