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外の世界の大きな光を背に、浮かび上がる少女のシルエット。
性格も良くて、元気で、生徒会役員までやっている私の自慢の親友。
「――じゃあ、行こうか?」
繋いだ手を少しだけ持ち上げて、一上くんが――そっと離した。
私の手は宙に浮かび、無骨な彼の温もりは私の肌から失われていく。
「――うん」
スマートフォンの画面をタップして、彼はLEDライトの小さな光をあっさりと消す。
そして一上くんは、私に背を向けると地面を蹴り、リズムよく歩き出した。
私と二人で歩いていた時よりも、ずっと軽やかな足取りで。
その背中を見つめる。きっと私は今も優しい笑顔を浮かべている。
笑顔は幸せを表しているわけじゃない。もし、これが嘘の表情だと言うのなら、じゃあ、他にどんな表情をすれば良いというのだろう? ――教えてよ。
小さな光は消えても、胸の鼓動は加速したまま、止まらない。
大きな光が洞窟の向こうで輝いている。
私はそっと離された右手のひらを、自分の心臓に押し当てる。
――ドクッ、ドクッ、ドクッ
きっともうこの鼓動は止められない。
ずっと、抑えてきた想いだったのに。
LEDの小さな光が、変えてしまった。
私の恋を、動き出させてしまった。
でも、私は美奈を裏切ることなんてできない。親友だから。大好きだから。
でも、私は一上くんを嫌いになんてなれない。友達だから。大好きだから。
やがて、一上くんが、大きな光の中へと包まれる。
そしてシルエット。美奈の隣で、綺麗な二人のシルエット。
振り返った二人が、私に手を振る。
『結衣〜! はやく、はやく〜!』
『もう、大丈夫だぞ〜! 明るいぞ〜!』
視界の向こうで、二人が寄り添う。
それは光の中で輝く二輪の花のようで。私はそれを眺めるだけで。
私にはどうすることもできない。
それなら、
あぁ、光なんてなければいいのに――
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